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2000.05【特集記事−本誌編集部より−】
機械安全設計の国際規格化
━━ ISO 12100/ISO 14121 ━━


 

「安全」の問題は、大きく2つに分けられる。1つは、環境や労働安全のように、シチュエーションや、影響に関連するもの、もう1つは製品設計に関連するものである。
今回は、後者の製品安全に関連する国際標準規格の最近動向について考えてみたい。
製品安全に関しては、今まで、PL対策やCEマーキングの関連から、小センターでも取り上げてきたが(「PL(製造物責任)対策マニアル」編著:高橋隆一 定価39,800円、「CEマーキング取得マニアル」編著:金武典夫 定価45,900円 参照)
1997年、はじめて「安全設計のためのリスクアセスメント手法」(編著:松本俊次・定価39,800円)を刊行。製品安全の思想導入の必要性を世に問うたわけです。それから3年し、いよいよ、この問題が大きく設計・開発者の前に立ちふさがってくる勢いです。
ISO規格の中で一番、製品安全の分野に重大影響があると思われている規格に、機械類の製品安全に関する国際規格ISO 12100と、リスクアセスメントに関する国際規格ISO 14121があります。
ISO 12100は、現在FDISの段階にあり、センサー関連の調整が残っているが、既に、JIS/TRB0008,0009として公表されており、規格化がま近い。ISO 14121はすでに判定され、企業への導入が続いている。
ISO 12100もISO 14121も、機械類の安全性に関する規格構成ではトップに立つタイプA規格であり、個別機械毎に規定される個別安全規格は、これらのISO 12100やISO 14121の適合が不可欠となる。
表1.安全規格の位置づけ
表1.安全規格の位置づけ

ISO 12100は、非常に広範囲の機械類を対象にしており、工作機械、産業機械、搬送機械、産業用ロボット、印刷機械、各種プラント更に、医療機器、家電製品なども対象になると思われる。
ISO 12100規格は、パート1、パート2の2部構成になっており、

表2.ISO 12100の規格の構成
表2.ISO 12100の規格の構成

また、危険源は次のように分類され安全対策も選択指針が明示されている。

a)機械的危険…シャープエッジ、運動中衝突を起こす相対位置、重力、速度、加速度など(による傷害)
b)電気的危険…電圧を生ずる物質(への接触)
c)熱的危険…熱源(による火傷)
d)騒音危険(による聴力喪失、疲労)
e)振動危険(による血行障害、座骨神経痛)
f)放射能による危険…低周波、紫外線、X線など
g)材料および物質による危険…有害な気体・液体、ビールス
h)人間工学原則の見落としによる危険…不健全な姿勢、ヒューマンエラー(による傷害)
i)組合せ危険
表3.ISO 12100の危険源

ISO12100では、「安全とは受け入れ可能なリスクがないこと」と定義され、リスクアセスメントを繰り返し、リスクを低減することが求められている。
ISO 14121では、そのリスクアセスメントを具体的な手順・手法・見積り、評価、文書化について規定されている。
ISO 14121は、リスクアセスメントの具体的なやり方を規定したものである。リスクアセスメントを含む安全検討は、各企業のデザインレビュー若しくはセーフティレビューでなされて来ているが、そのやり方は設計者にまかされ各企業まちまちであったと考えられる。
表4.ISO 12100に規定される安全方策
表4.ISO 12100に規定される安全方策
0 序文
1 適用範囲
2 引用規格
3 定義
4 一般原理
5 機械の限界の定義
6 危険の定義
7 リスクの推定
8 リスク評価
9 文書提出
付属書A 危険、危険状態および危険事象の例
付属書B 危険解析およびリスク推定の方法
付属書C 参考資料
表5.ISO 14121の規格の構成

規格によれば、リスクアセスメントはリスクの大きさにより機械の安全性を評価する手法であり、やり方が誰にでも理解出来るようになった。小センターのセミナー「機械安全国際規格化への対応ISO 12100/ISO 14121の規格概要と導入手順」では、リスクアセスメントの各手順の概要と共に、リスク低減対策と組合せ如何にしたら許可可能なリスク(安全)まで低減出来るかを説明する。
国際規格は、内容の理解より社内へ導入するまでに数年を要すると思われる。JIS制定を待つ或いは行政側の対応を待つようでは、国際化の流れに乗り遅れてしまう。是非、当セミナーをご受講の上、早めに対応することが勝ち残る秘訣である。

図1.リスクアセスメントと安全対策のフロー
図1.リスクアセスメントと安全対策のフロー



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