前のページへ戻るホームへ戻るテクノビジョダイジェスト
 
2001.04【特集記事−本誌編集部より−】
拡がる試験所・校正機関認定
─ その取得理由とメリット ─

 
青柳 邁氏
(財)日本適合性認定協会
試験所認定部担当部長
ILAC技術委員会委員
適合性評価検討JIS化小委員会委員


1.試験所認定の必要性

試験所認定制度が発足して以来、試験所認定は強制法規への対応や貿易の自由化のための道具として必要であることが強調されてきたが、最近ではさらに製品評価に関連して消費者の安全・健康の確保および組織の発展のために必要であると考えられている。今後の傾向である組織による自己適合宣言とその場合の試験所の役割を説明する。そしてJIS試験所認定制度の目的を説明することにより、企業の試験所に於いても自己適合宣言の重さからいって、それへの重要な役割を担う図に示した適合性評価機関の1つである試験所の認定が必要になっていくことを述べる。

1)自己適合宣言

自己適合宣言はISO/IEC Guide 22(供給者による適合の宣言に関する一般基準)に規定されている。いわば第一者で行う製品認証である。その内容は
  1. サンプルと同じものが安定して生産される。即ち工場の品質システムがISO 9001/9002の要件を満たしている。
  2. サンプルが規格または仕様を満たしていることを保証する。即ち試験所の要求事項ISO/IEC 17025を満たしている。 客観的にこれらの内容を証明してもらっておくことが、自己適合宣言の重要性からいっても必要になる。このことがJISに於いても試験所認定制度を普及させている理由であるし、改定されたFQA(the Fastner Quality Act、米国の締結用部品に関する強制法)に於いても自己適合宣言でよくなった理由である。ただしFQAの場合はその試験所は認定されていることが法律で義務づけられている。
2)自己適合宣言書の内容

ISO/IEC Guide 22は、宣言書と宣言の基礎となった適合性評価の結果とを関係づけることができるように規定されている。その5.2(宣言書付加的情報)の項で、例えば、次のような付加的な情報を提供することが期待されている。
  • 利用した試験所又は認証機関の名称及び所在地。
  • 適合の根拠となる試験報告書の参照(表題、番号など)。
  • 自己評価又は審査登録した品質マネジメントシステムの参照。
  • 試験所の認定書の参照(認定機関、認定番号など)。
以上から理解されるように、Guide 22は自己適合宣言するときには認定された試験所を参照することが付加的情報として記述されている。また試験所が認定を受けていれば、客観的に試験所の信頼性を第三者に説明できる。

3)試験所が認定取得を必要とした理由

(財)日本適合性認定協会(JAB)に認定された試験所及びさらに申請中の試験所が認定取得を必要とする理由を整理してみると次の通りである。
  • ビジネスチャンスとして
    ダイオキシン試験所 一般環境試験所 EMC試験所
    熱電対の校正機関 生コンクリート試験所
  • 強制法または顧客からの要望で
    ファスナー機械試験所 QS-9000対応校正機関
    鉄鋼分析試験所 鉄鋼機械・物理試験所
  • 認定を特定商品の販売に利用する
    測長形電子顕微鏡の試験所 アミノ酸測定の試験所
    試薬製造所試験所
  • 試験所の体質を改善する
    化学天秤の校正の試験所
  • 公的資格の一つとして(中央研究所の権威として)
    塩事業センター海水総合研究所
    日本たばこ協会分析センター セメント協会研究所
    全国生コンクリート工業組合中央技術研究所
  • PL法に関連して
    食品の試験所
これらの中には企業の信頼性を向上し、発展させるという意図が様々なかたちで含まれていると考えられるが、現在のところ自己適合宣言の根拠としてという申請は直接のかたちとしては見えていない。

2.試験所認定機関の相互承認のメリット

試験所認定の第一の目的は、認定された試験所からの試験報告書または校正証明書について、日本国内はもとより、世界中の誰にでも信頼感をもってその内容が受け入れられ、それにより自由に物品の流通が可能になることであろう。そのためにはそれらの試験所を認定する機関が信頼できるものと世界中から認められることが必要である。そのための仕組みとして認定機関で国際規格に基づいて相互承認されることが必要条件になる。相互承認を受けた認定機関による試験所の認定はその試験所、試験所の利用者(消費者)にとって以下のメリットがある。

(1) 試験所にとってのメリット
  1. 試験所の信頼性及び試験報告書の信用性が向上する。
  2. 信用及び競争力の強化によって、事業、人材確保等に貢献できる。
  3. 相互承認メンバーの認定試験所の試験報告書は同等であると相互承認メンバーに認知される。
  4. 試験報告書が相互承認メンバーの国で不都合を生じた場合、相互承認メンバー(認定機関)を通じて話し合うルートを確保することができる。
  5. 試験報告書が相互承認メンバー国のみならず、広く国際的に流通し易くなる。
  6. 重複した認定取得を回避すること(時間及びコストの節減)が期待できる。
  7. 強制分野の各種相互承認協定をサポートする形で民間の相互承認を活用することを政府に働きかけることが期待できる。
  8. 自己適合宣言の基礎になる。

(2) 試験所の利用者にとってのメリット
  1. 相互承認メンバーの認定試験所の試験報告書に対して同等の信頼感を持つことができる。
  2. 試験報告書に対して不都合が生じた場合、当該国の相互承認メンバー(認定機関)を通じて原因究明と再発防止を要求するルートを確保し、責任ある回答を求めることができる。
  3. 自己適合宣言に活用できる。

図 適合性評価の仕組み


前のページへ戻るホームへ戻るテクノビジョンダイジェスト