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2001.07【特集記事−本誌編集部より−】
製品認証とは何か!(1)
その制度の概要と認証機関認定プログラムの開発

 
財団法人日本適合性認定協会
専務理事 井須 雄一郎

1.製品認証とは

製品認証とは、供給者が提供する製品・プロセス等が、特定の規格などに適合しているか否かを第三者の製品認証機関が評価し、認証を付与する制度である。
製品認証機関の守るべき基準としてISO/IECガイド65及びその他の要求事項があり、製品認証機関を認定する認定機関の守るべき基準としては、ISO/IECガイド61が定められている。図1参照。
製品認証と品質マネジメントシステム(QMS)との違いは、QMSではシステムのみを審査の対象とするのに対して、製品認証では製品等を対象として評価(試験、検査、審査)し、関連製品規格への適合を認証するものである。
ISOでは製品認証システムを品質システムの有無、サーベランス実施の有無、試験の実施方法の違いによって7分類に区分しており、世界的に広く活用されている。
適合性評価制度の本来の目的は、製品に対する安全と健康の確保であり、製品の自由流通を目的としているから、品質マネジメントシステム審査・登録制度、試験所認定制度、検査機関認定制度等はこの製品認証制度の基礎をなすものであり、これらの組み合わせから成り立つといえる。
欧米では、製品認証の歴史は古く、民間の認定機関の適合性評価システムを規制当局が活用している例が多い。日本では従来から強制分野において製品認証機関が指定されている例が多く、国際規格に準拠した民間の製品認証制度は存在していなかった。最近国際化のニーズに応えてJABが認定事業を開始したが、諸外国のように規制当局によってこれを活用する仕組みが一般化することが望まれる。表1に海外の認定状況を示す。

表1:海外の認定機関による製品認証機関の認定の状況
認定機関 DAR(独) RVA(蘭) SCC(加) ANSI(米) JAS-ANZ(豪、N.Z)
認定した機関数 87 45 20 12 6


2.品質システム審査登録機関認定制度と製品認証機関認定制度の違い

品質システム審査登録機関認定制度は、製品そのものの評価ではなく、それを補うものとして設計、製造、付帯サービスにおける対象組織の業務運営に係る品質システムをシステム規格に対して審査登録を行う審査登録機関の能力を、ISO/IECガイド62に照らして認定するものである。
製品認証機関認定制度の対象は製品の関連製品規格への適合を認証する製品認証機関であり、同機関の運営に係る品質システムだけでなく、その製品認証機関が特定製品の認証を行う能力を、ISO/IECガイド65に照らして認定するものである。特定製品の認証を行う能力とは、対象製品の評価(試験、検査、審査等)並びに評価結果に基づく認証に従事している個々の要員の職務遂行能力、個々の評価設備の能力及び各評価遂行能力(適切な評価方法の選択等)を意味している。
ガイド65で認定された製品認証機関により認証を受けた適合供給者(組織)は、製品等に本協会のロゴマークを使用(貼付)することができるが、ガイド62で認定された審査登録機関により審査登録を受けた適合供給者は、製品にロゴマークを付けることは禁じられている。
なお、ロゴマークの付けられた認定登録書は、認定機関間で締結された相互承認国内で広く通用する。(製品認証分野の国際相互承認については、現在、PACの場において検討作業が進められている。)

図1:製品認証制度

図1:製品認証制度

注1 PAC : Pacific Accreditation Cooperation


3.製品認証機関認定プログラムの開発

3.1 開発経緯

製品認証機関認定プログラムは、本協会設立以来の審査登録機関認定プログラム(QMS:1993/12〜、EMS:1996/7〜)、試験所・校正機関認定プログラム(1997/4〜)の開発・運用から得られた知見等をベースにした。

3.2 我が国における製品認証機関認定制度の必要性

  • 我が国では、強制分野においては個々の法律によって製品認証機関が指定されている等、製品認証機関の能力の水準は保証されているが、任意の分野においてはISO/IECガイド65及びISO/IECガイド61に基づく横断的な民間の製品認証機関認定制度は存在していなかった。しかしながら、任意分野においても顧客(製品購入者、製品製造者、輸出入業者他)の要請等から我が国における製品認証機関認定体制の整備に対するニーズが高まってきている。
  • WTO/TBT協定発効(1995年1月)以降、適合性評価手続の国際整合化の必要性が広く認識されるようになっていること、また、APEC(アジア太平洋経済協力会議)諸国及びEU-日本の政府間相互承認協定も実行段階に入ってきていること等から、製品認証機関がこれまでに行ってきた認証制度を国際標準であるISO/IECガイド65へ適合させるという要求が挙がってきている。
注2 APEC : Asia-Pacific Economic Cooperation
注3 EU : European Union


3.3 認定及び認定機関に適用される国際規格等について
  • 製品認証機関の認定は、ISO/IECガイド65(JIS Q 0065「製品認証機関に対する一般要求事項」)及び場合によりその他の要求事項に従って行うものとする。
  • 製品認証機関の認定機関は、ISO/IECガイド61(JIS Z 9361「認証機関及び審査登録機関の認定審査並びに認定機関に対する一般要求事項」)及び認定機関間国際相互承認締結後はその要求事項を満たすものとする。
  • ISO/IECガイド65の適用に関しては、IAFのガイダンス(IAF Guidance on the Application of ISO/IEC Guide 65-Issue 1(1999/3)が発行されているので、これに準拠して本協会の認定の基準に対する指針を制定するものとする。
3.4 対象とする分野および認証システム

原則として、すべての産業分野を対象とするが、ニーズの高い分野から開始する(含対象分野における専門的能力の確保)という方針で進めていくこととする。(表2参照)認証システムの類型は表3による。
  • 当面、消防設備分野、溶接施工法分野、繊維製品分野等のニーズに対応していく。
表2:分類表 (出典:日本規格協会 ICS国際規格 分類第4版)
JCSコード 項 目
01 総論.用語.標準化.ドキュメンテーション
03 社会学.サービス.経営組織及び管理.行政.運輸
07 数学.自然科学
11 医療技術
13 環境.健康予防.安全
17 度量衡及び測定.物理的現象
19 試験
21 一般的に利用される機械的システム及びその構成要素
23 一般的に利用される流体システム及びその構成要素
25 生産工学
27 エネルギー及び熱伝達工学
29 電気工学
31 エレクトロニクス
33 電気通信工学.オーディオ及びビデオ工学
35 情報技術.事務機械
37 映像技術
39 精密機械.宝石類
43 自動車工学
45 鉄道工学
47 造船及び海洋構造物
49 航空機及び宇宙飛行機工学
53 荷役装置
55 包装及び物流
59 繊維及び皮革技術
61 被服工業
65 農業
67 食品技術
71 化学技術
73 採鉱及び鉱物
75 石油及び関連技術
77 金属工学
79 木材工業
81 ガラス及びセラミック工業
83 ゴム及びプラスチック工業
85 紙・パルプ工業
87 塗料及び色材工業
91 建築及び建設材料
93 土木工学
95 軍事工学
97 家庭用及び商業用装置.娯楽.スポーツ
99 表題なし

表3:製品に関する認証システム 表3:製品に関する認証システム


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