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2002.08/09【特集記事−本誌編集部より−】
QS-9000からISO/ TS 16949へ
─ISO/ TS 16949の現在までの流れとその概要─

 

1.ISO/ TSとは:

  • 1998年に発表になった、ISOでの規格制定段階でのアウトプットのひとつ。
  • ISOは通常専門委員会が準備し、採択された国際規格原案が投票(DIS、FDIS等)のため加盟団体に回付され、加盟団体の75%以上の賛成で出版される。
    しかし、他の状況、特に緊急の市場要求がある場合は専門員会は他の形式の規範文書で出版する決定をしても良いことになっており、その1つがISO/TSである。
  • TS(Technical Specification:技術仕様書)とは、国際規格としての出版の1つの形態。
  • 専門委員会(TC)メンバーの間で合意され、親委員会の2/3以上の賛成投票で出版fされるものである。
  • TC/SCレベルで同意されたもので規格になる前段階文書との位置付け。 DISと並んで、規範文書になれるもの。
  • これを基準として、第三者審査機関が審査を行い、適合証明書を発行できる。
  • これに対し、同じレベルの文書である、TR(Technical Report)は、非規範文書と位置付けられており、これを基準にして適合性監査はできない。
  • いわば業界の規格であり、ISO/TSでは、国際統一規格(IS)に移行するための検討が、3年毎に実施される。

2.ISO/ TS 16949とは

  • ISO 9001:1994年版をベースにした米国ビッグ3の規格であるQS-9000を母体にして、欧州、仏、独、伊3カ国の自動車の固有規格を統合した、自動車業界固有の国際規格である。従って各国固有の規格も含んでいる規格である。
  • ISO/TS 16949はIATF(International Automotive Task Force)並びにISO/TC176(品質管理および品質保証に関する専門委員会)及びその小委員会からの代表によって作成されたものである。
  • ISO/TS 16949は自動車業界において、その適用により情報及び経験が集められるように予備的に適用できるように発行されたものである。
  • ISO/TS 16949の設定に関連している団体
★IATF─自動車の製造業者と関連する業界団体から構成する、“アド・ホック”グループで、全世界の自動車の顧客に、品質を改善した製品を供給するために結成された。
特に、具体的には、次のことを目的としている。
  1. 直接の供給者の品質システムについて、コンセンサスの取れた要求事項をまとめる。
  2. 全世界に通用する、共通のIATF第三者登録スキームの方針と、手順を作り上げる。
  3. ISO/TS 16949要求事項をサポートする、適切な教育訓練と、IATFの登録制度を作る。
  4. IATFの目的を支持する適切な団体との公式な連携を取る。 メンバーは次の通り:
    BMW、ビッグ−3、FIAT、Peugeot-Citroen、Renault、Volkswagen、AIAG (USA)、ANFIA (Italy)、FIEV (France)、SMMT (U.K.)、VDA (Germany)
★IAOB−IATF監視事務局との位置付け。
ミシガン州の会社。メンバーには、ビッグ−3とAIAGを含んでいる。
設立の目的は次の通り:
  1. IATFのために、ISO/TS 16949の登録のスキームの監視活動を実施し、管理する。
  2. ISO/TS 16949登録スキームの世界的な一貫性を確実にするために、ヨーロッパの監視事務局との調整業務とその管理(management)。
  3. 他の自動車メーカーとの世界規模の調和を採ることについて、IATFを支援する。
  4. 登録のスキーム管理に役立つ、戦略的な、中央のIATFデータベースを開発し、維持する。

3.ISO/ TS 16949の歴史

1987: ISO 9000sが発行
1994: QS-9000が米国ビッグ3から発行
欧州各国は独自の規格で運用
  • 独:VDA6.1、仏:EAQF94、伊:AVSQ94等
1997.11: 各国固有の規格を国際的な規格として統一することを目的にISO/TC176リオ総会の中で検討。
  • 「自動車に関するタスクフォース・グループ」の設置が決定
  • メンバーはIATF(International Automotive Task Force)及びISO/TC176委員
  • IATFの参加メンバー:BMW、DC、フィアット、フォード、GM、プジョー、ルノー、VW、AIAG、ANFIA(伊)、FIEV(仏)、SMMT (UK)、VDA(独)
  • 日本はIATFのメンバーに入っていないため不参加
1998.03: QS-9000の第3版が発行
1998.12: ISO/TR 16949として発行
1999.03: ISO/TS 16949として発行
  • 欧米各国の主要自動車メーカーで認証制度(パイロット)開始
1999.11: IATFはIAOB(International Automotive Oversight Bureau)等の運用機関を設け運用を開始
2002.01-02
現在;
48機関。審査中;11機関
2002.03: ISO/TS 16949の2000年版(第2版)発行

4.運用と認定の状況、見通し

  • 日本の自動車メーカーはIATFに参加していないため、現時点ではTS16949は採用していない。
  • 今後自動車メーカー間、部品サプライヤーの国際的な提携や国際的な部品調達の進行により、国内においても採用が進むと考えられる。
  • 欧州の自動車メーカーはTS16949設定の背景からも、TS規格を採用しようとの姿勢が強く、欧州の自動車メーカー、部品メーカーと取引のある企業に対しては、TS16949取得の要請が多くなることが予想される。
  • 日産自動車がサプライヤーに対してTS16949の規格を採用する方向であることを発表している。
  • TS16949は顧客規定の要求事項(独、仏、伊、QSの顧客要求事項)を含む場合は、AVSQ、EAQF、QS-9000、VDA6.1を満足することになる。
  • QS-9000はISO 9001:2000年版改訂には対応せず。2006年12月14日をもって無効となる。

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