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2003.03【特集記事−本誌編集部より−】
競争力強化のための環境負荷低減活動
環境適合設計(DfE)で魅力ある製品開発を!


 
地球環境について、これほどまでに各社が真剣に取り組み、その成果をあげなくてはならない時代はなかった。純粋に環境問題を考えた結果、真剣に取り組んでいるケースもあれば、企業市民としての義務という動機もあれば、入札や購買条件という「外圧」もあるだろう。だが、大量生産、大量消費の時代が永遠に続くわけがないことは誰にでも分かることであり、新しい技術を活用し、ライフサイクルを通して環境負荷の少ない製品を開発しなければならないことは事実である。その手法として注目されているのが、環境適合設計である。環境負荷の低減は原単位の低減につながると同時に、長期間の使用に耐える魅力が必要になる。頻繁なモデルチェンジによる購買意欲の刺激とは対極にあるこの「魅力」をいかに創造するか。真の実力が試されようとしている。


製造業が環境保全型社会につながるサスティナブル社会の形成に貢献していくためには、その製品が直接、間接に有する環境負荷を継続的に低減する努力が課せられる。
このアプローチとして、既に生産、使用、廃棄される全ライフサイクルで現に発生している顕在的な環境影響を低減させるかという「改善」タイプ、そしてこれから開発・設計しようとする製品に対して、全ライフサイクルで発生するであろう潜在的な環境影響側面を洗い出し、これを極力少なくしていく「革新」タイプがあるだろう。

企業としては、社会的責任としていずれのアプローチにも取り組まなくてはならないが、潜在的な環境負荷を低減させるには設計段階での企業努力が重要になる。
廃棄やリユース、リサイクルを容易にするための分解しやすい構造、分離しやすい構造や分離しにくい複合材料の抑制、リユース、リサイクルしやすい材料の採用、危険・有毒・有害物質などの排除・排出抑制、材料種類の明示化・低減化、部品種類の低減化・統合化・モジュール化、廃棄処理事業者への製品情報開示などがあげられる。これらはいわれてみれば当たり前だが、実現していくのはコスト、工数、場合によっては生産工程の変更も含み、困難を伴うことも多々ある。また、材料開発や技術革新、法改正のスピードも速く、情報をつねに最新のものにしておくには相当の労力が必要だ。
たとえば、鉛フリーはんだ。有害物質である鉛を含まないが、材料コストが高い、クラックが起こりやすい(不良が出やすい)という問題を抱える。この弱点をどのように克服するかが設計、生産技術力といえよう。

一方、環境負荷低減がコストダウンに結びつくケースも多い。解体容易にするためにネジ締めを少なくすれば、ネジ締め工程が削減できる。樹脂についても、同一材料への切り替えは管理工数の削減、購買部門ではボリュームディスカウントにつながる。
あるいは修理・部品交換の容易化を行うことで、使用者が製品寿命まで大切に使用するといったことで、廃棄物の削減が可能になる。このときには外観や商品イメージ、企業イメージなども含め「愛着を持って使用つづけられる魅力ある商品であること」も大切だ。
企業として取り組まなくてはならない大きな課題の一つが環境だが、一方で環境への府対応はリスクともなる。地球環境保護という視点だけでなく、企業競争力強化のためにも、魅力ある商品開発のためにも積極的に推進していく必要がある。



図 製品規格の規定事項と製品ライフサイクル中の環境影響との概念図
(「ISO/TR 14062に対応する実践環境適合設計(DfE)マニアル」(監修・阪本三郎氏)より)

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本稿は「ISO/TR 14062に対応する実践環境適合設計(DfE)マニアル」(阪本三郎氏監修)をもとにテクノビジョン用に書き起こしたものです。


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