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2003.10-11【特集記事−本誌編集部より−】
内部監査員の力量アップの必要性

 
 ISO9001を認証登録した企業の中で、ISOが企業の体質改善や品質改善に寄与していないという者が多いのはどうしてであろうか?
 より具体的な話をきいてみると、

  1. 仕組みが2重構造(ISO9001の品質マネジメントシステムの仕組みと現実組織の運営の仕組み)になっていないか。ISOと実際の業務とは別であるというお話。
  2. 内部監査が建前主義に陥る(本音の指摘が減る)。
  3. 文書/記録類が増加し、管理が煩雑になる。
  4. 定期維持審査(サーベイランス)での指摘には限界がある。
  5. 顧客/組織内の苦情が減らない。

という声が聞こえてくる。
 このようなことが起こっている大きな原因の1つが、内部監査の計画/実施の問題点と、内部監査員の力量不足である。そのために、内部監査か規格か求めている実効を発揮していないということである。
 品質マネジメントシステムが成長していくには、製品の市場性と業務プロセスの改善を通して、品質マネジメントシステムに投資した時間と努力を回収すべきである。そのためには、現実的な仕組み作りの見直しと、真に効果のある内部監査の改革、内部監査員のレベルアップ、力量アップへのアプローチが急務となっている。その結果、はじめて、代替審査(WDI)への道も開かれてくるわけだ。

 まず、内部監査員は、ISO9000:2000版の内容とポイントをよく把握しておく必要がある。
 ISO9000:2000の特長は、まず、ISO9001とISO9004をコンシステンドペア規格として、それぞれ独立でありながら整合性のあるペア規格として位置づけたわけだが、ISO9004は、持続的な顧客満足・利害関係者の利益をとおして、組織のパフォーマンスの有効性及び効率の双方を継続的に改善することをねらいとするISO9001をこえる品質マネジメントシステムのモデルとなっている。このISO9004を内部監査員は熟読すべきである。また、ISO14001との両立性の向上のため、ISO19011という品質・環境監査の指針が発行された。内部監査員は当然ISO19011も熟知すべきだが、この適用を企業の規模や具体的状況に応じて使いわけるフレキシブリティが必要となるであろう。
 ついで、品質マネジメントの原則の採用がある。品質マネジメントの8原則は、トップマネジメントが組織のパフォーマンスを継続的な改善に向けて導くために、8つの品質マネジメントシステムの原則を明確にするものだが、以上の8原則

  1. 顧客重視 組織はその顧客に依存しており、そのために、現在及び将来の顧客ニーズを満たし、顧客の期待を越えるように努力すべきである。
  2. リーダーシップ リーダーは、組織の目的及び方向を一致させる。リーダーは、人々が組織の目標を達成することに十分に参画できる内部環境を創りだし、維持すべきである。
  3. 人々の参画 すべての階層の人々は組織にとって根本的要素であり、その全面的な参画によって、組織の便益のためにその能力を活用することが可能となる。
  4. プロセスアプローチ 活動および関連する資源が一つのプロセスとして運営管理されるとき、望まれる結果がより効率よく達成される。
  5. マネジメントへのシステムアプローチ 相互の関連するプロセスを一つのシステムとして、明確にし、理解し、運営管理することが、組織の目標を効果的で効率よく達成することに寄与する。
  6. 継続的改善 組織の総合的パフォーマンスの継続的改善を組織の永遠の目標とすべきである。
  7. 意思決定への事実に基づくアプローチ 効果的な意思決定は、データ及び情報の分析に基づいている。
  8. 供給者との互恵関係 組織及びその供給者は独立しており、両者の互恵関係は両者の価値創造能力を高める。
これらの八つの品質マネジメントの原則は、JIS Q 9000ファミリーにおける品質マネジメントシステム規格の基礎となる。

は、プロセスアプローチや継続的改善等のISO9000:2000の重要項目も含まれており、内部監査員も忘れてはならない原則である。

 最後に、顧客志向の重視は、企業活動の根本であり、内部監査員も当然例外ではない。なお、文書化要求事項は、’94年版と比較して“文書化された手順”の要求事項の数が減少している。
 ISO19011(品質及び又は環境マネジメントシステム監査のための指針)では、内部監査の質の向上のために、監査プログラム管理へPDCAサイクルを適用する。


図1 監査プログラムの管理へのPDCAサイクルの適用

 監査員の個人的特質として、
 監査員は、4. に記載する監査の原則に従って行動できるような個人的特質を備えていることが望ましい。
 監査員は次のようであることが望ましい。
  1. 倫理的である。すなわち、公正である、借用できる、誠実である、正直である、そして分別がある
  2. 心が広い。すなわち、別の考えかた又は視点について進んで考慮する
  3. 外交的である。すなわち、目的を達成するように人と上手に接する
  4. 観察力がある。すなわち、物理的な周囲の状況及び活動に敏感に気づく
  5. 知覚が鋭い。すなわち、状況を直感的に認知し、理解できる
  6. 適応性がある。すなわち、異なる状況に容易に合わせることができる
  7. 粘り強い。すなわち、根気がよく、目的の達成に集中できる
  8. 決断力がある。すなわち、論理的な思考及び分析に基づいて、時宜を得た結論に到達できる、及び
  9. 自立的である。すなわち、他人と効果的なやりとりをしながらも独立して行動し、役割を果たすことができる
 監査員の知識及び技能として
  • 監査の原則、手順及び手法を適用すること。
  • 効果的に作業を計画し、運用すること。
  • 適切な機会に監査を行うこと。
  • 重要なことを優先し、そこに注力すること。
  • 面談、聞き取り、観察、記録を含む文書簸の審査を効果的に行い、情報を収集すること。
  • 収集した情報の正確さを検証すること。
  • 監査所見及び監査結論の根拠とするために監査証拠が十分かつ適切であることを確認すること。
  • 監査所見及び監査結論の信頼性に影響し得る要素について評価すること。
  • サンプリング手法を使用することの適切性及びそれによる結果を理解すること。
  • 作業文書を使って監査活動を記録すること。
  • 明確かつ簡潔な監査報告書を作成すること。
  • 情報の機密を保持すること。
  • 自分の語学力で、又は力量のある通訳の支援を介して、効果的に意思の疎通を図ること。
 実際に行われている内部監査の問題点としては
 審査、コンサルティング他を通して、次のような事例が多く見られる。

(1)監査のやり方
  • 品質マニュアル、手順書が規格の要求事項に適合しているかを監査している
  • 目的を明確にせず、単に監査を実施している
  • 品質マニュアルをベースにしたルールを守っているかのチェック
(2)是正処置のやり方
  • 是正処置が時宜を得て実施されていない。
    是正処置の計画を確認に終わって、実施状況については次回の内部監査で確認するという、審査登録機関がやっていることと同じ事を実施している。
    −これでは、是正処置が遅れ、他企業との競争に遅れをとる
  • 是正処置が不適合の処置に終わっている。
  • 真の原因の究明がなされていない。
  • 原因を除去するための再発防止がなされていない。
  • 是正処置の評価がなおざり
(3)経営者の視点
  • 経営者は、ISO9001登録の効果が上がらないのは、審査機関のせいと考えている。
  • ISOと業務は別物と考えている。これはISOに関係する、これはISOとは関係ない、とかいって日常業務で処理している。
  • 企業の利益に直ちに直結しないので効果がないと考えている。
  • 内部監査を重視していない。 内部監査はISO9001でやることだろうぐらいに考えている。
  • 監査員に、優秀な力量のある社員を選任していない。
  • 監査員の教育・訓練の機会を与えていない。
 このような問題点を解消していくことが、内部監査のレベルアップと内部監査員の力量アップにつながります。(次回は、実際の監査のすすめ方、不適合の指標の仕方、是正処置のすすめ方等をチェックリストの作成といっしょに確認していきたいと考えております。)

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