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2003.12【特集記事−本誌編集部より−】
効果のある内部監査の方法とチェックリストの作成法

 

1.監査の準備

自組織の品質マネジメントシステムの実態を把握して、監査の準備に入ること。
(1)第1段階−1st ステージ ISO9001の登録前/登録後1年経過−
  • 自組織のマネジメントシステムのルールを徹底して遵守すること。
  • 品質マニュアル/規定等の手順書からルールを書き出してチェックリストにする。

(2)第2段階−2nd ステージ ISO9001登録後1年/2年経過−
  • 自組織のマネジメントシステムのルールは本当に正しいのか?
  • ムダ、ムリはないのかの視点で監査を実施−ムダ、ムリの排除
  • 記録をベースに、当該記録は何の目的で作成されているか
  • 目を通していない文書、記録はないか?
  • 文書、記録が二重作成されていないか
  • チョッと工夫すれば文書、記録の統合ができないか
    等を重点においたチェックリストを作成する。

(3)第3段階−3rd ステージ ISO9001登録後2年経過後−
  • 監査の目的を明確にして、監査プログラムに反映する。
  • 監査の目的として、例えば以下の事例がある。
    1. 品質目標の達成レベルの確認
    2. 社内クレームの絶滅
    3. 顧客クレームの絶滅
    4. 顧客要求事項の把握、理解とその実行
    5. 利益5%アップの戦略
    6. 顧客満足度アップ
    7. プロセスの変更に伴なうシステムの完整性
    8. 継続的改善
    等を考慮したチェックリストを作成する。

2.チェックリストの作成とその内容が内部監査の成否を決める

(1)チェックシート作成の目的
  • 監査を計画した通りに確実に実施するために、自ら作成する。
  • 監査漏れを無くし、監査を冷静、効果的に進めるため。

(2)チェックリストの良い点
  1. 監査を効率よく進めることができる
  2. 秩序だった円滑な監査ができる
  3. 監査の一貫性と深さを確保できる
  4. 適合/不適合の判定が適確に下せる
  5. 監査項目の見落としがない
  6. 監査結果を記録できる
    しかし、チェックリストに頼りすぎると監査作業の自由度を欠き、画一的な監査になったり、チェック項目が記載されていないために重要な監査項目の監査モレが発生することなどが想定されるので注意が必要。

(3)チェックリスト作成
  1. 第1段階−1st ステージ ISO9001の登録前/登録後1年経過−のチェックリスト

  2. 第2段階−2nd ステージ ISO9001登録後1年/2年経過−
    • 適合監査のための形式的な内容では不可。……【事例 参照】
      「…・手順書はありますか?」、「記録はありますか?」「効果はありましたか?」 等の質問では、継続的改善のための改善の機会を提供できない。
      このような質問、チェックリストは文書審査の内容であり、認証取得後1年以上経過した組織では、このような内容のチェックリストでは効果的な内部監査は−経営者が期待している改善の機会の提供−は実行できない。
    • チェックリスト ……【事例 参照】
      自組織で構築した品質マネジメントシステムの構築した内容を徹底して検証すること、即ち自組織で決めたルール通りの業務がなされているかを先ず、検証することのチェックリスト。
      *具体的な文書名、図面、記録等を特定して、品質マニュアル、規定、標準等に従って業務が行われているかを確認していく。
      1. 「チェックリストの確認欄」に文書名、図面、記録等を特定
      2. 業務ルールを書き出す
      3. 実地監査でルール通りの業務がなされているかを確認
      4. その際、■ルールが正しいか
            ■ムダな作業をしていないか
      等も確認していく。

  3. 第3段階−3rd ステージ ISO9001登録後2年経過後−
    • チェックリスト作成の考え方 ……【事例 参照】
      前項で自組織のマネジメントシステムの運用ルールの遵守状況のチェックが完了したと思われたら次のステップは、経営者への改善の機会提供とすること。 具体的には内部監査の準備段階で次のことを予め調査して、調査結果を反映したチェックリストを作成する。
    • 前回の不適合の是正処置は完了しているか
    • 顧客からのクレーム、社内重大問題は解決されているか?
    • 組織の年度目標を重点チェックする
      *組織の終点目標を当該部門はどのように展開しているか、その達成状況、パフォーマンスはどうかを、予め調査しておく。
    • 顧客要求事項を把握しておく
    • 顧客満足度(CS)を把握しておく
    • 当該部門の重要特性を調査し、トレンドを把握しておく
      *管理図
      *継続的改善テーマの達成レベルは?又統計的手法の使い方はどうか?
    • 設備の変更、新設及び工程変更の状況を事前に調査しておく これらを予め調査する情報源は、内部監査−社内−であるから容易に入手できるはず。

3.内部監査を実施する際に考慮すべきこと

(1)監査の計画:監査計画を立てる前に、チームリーダーは下記の事項を調査しておく。
チームメンバーに割り当てて、監査の実施前にミーティングを開き、問題点共有化しておく。
下記の事項を念頭において監査の方針を明確にする。
  • 前回までの監査結果を熟読吟味して、当該部門の問題点を具体的に整理する。
    *問題は何か?
    *問題は解決済みか?
    *類似問題は発生していないか?
    *顧客からのクレーム、社内重大問題は解決されているか?
  • 組織の年度目標を重点チェックする
    *組織の終点目標を当該部門はどのように展開しているか、その達成状況、パフォーマンスはどうかを、予め調査しておく。
  • 顧客要求事項を把握しておく
  • 顧客満足度(CS)を把握しておく
  • 当該部門の重要特性を調査し、トレンドを把握しておく
    *管理図
    *継続的改善テーマの達成レベルは?又統計的手法の使い方はどうか?
  • 設備の変更、新設及び工程変更の状況を事前に調査しておく
(2)チェックリストの作り方
  • 適合監査のための形式的な内容では不可。
    *「…・手順書はありますか?」、「記録はありますか?」「効果はありましたか?」等の質問では、継続的改善のための改善の機会を提供できない。
  • 前項(1)を確認するための内容でなければならない。
    *具体的な文書名、図面、記録等を特定して確認していく。
    *バックグランドデータも含むこと
(3)監査の実施
  • (1)、(2)に基づいて監査を行う。議論を戦わせる。当然
    *重要特性値のバラツキは?
    *ムリ、ムダはないか?
    *継続的改善を実施しているか?
    *改善対策にモレはないか?
    を確認していくことになる。
  • 質問の視点
    「ISO 9000:2000 2.8.1 QMSのプロセスの評価」より
    QMSの評価を実施する場合、各プロセスを評価するための4つの基本的質問がある。
    1. プロセスは明確にされ、適切に規定されているか?
    2. 責任は明確に割り当てられているか?
    3. 手順は実行され、維持されているか?
    4. プロセスは、要求される結果の達成に効果的か?
(4)監査結果のまとめ
  • 「不適合」を指摘する場合、以下を考慮する。
    *システム上の問題が起因しているか
    *固有技術上の問題か?
    *「指摘事項」として記述する場合に、第3者審査のごとき、単なる現象面に終わるのではなく、問題点まで具体的に記述すること。
    *「不適合」について、フォローアップ監査を適宜実施すること。
    *これらの記録は、次回内部品質監査以降に使用できること
    以上の事を実施するためには、
  • 内部監査員は組織の中でも、優秀な人材を任命すること
  • 単に品質管理を知っているからとか、経験したことがあるからだけでは務まらない
  • 問題発見能力がある人
  • 問題が「システム起因か?」「固有技術起因か?」を見抜ける眼力が求められる
  • 技術にくわしい、統計的手法に通じている、成果の評価ができること 等を備えた監査員が望ましい。

4.監査の実施

  • 「是正処置要求書/是正処置報告書」には以下の事項を記述する欄を設けておくのがよい。

    • 監査日時
    • 監査チームメンバー
    • 不適合番号
    • 不適合の内容とその要求事項
    • 不適合の処置
    • 応急処置
    • 不適合の評価(問題の大きさ、影響)
    • 原因調査(抜本的な原因まで追求されているか。)
    • 対策(是正処置)の内容
    • 対策の有効性の確認
    • 是正処置の完了確認

5.不適合の摘出と記述

*不適合とは、“要求事項を満たしていないこと”。
  • 要求事項と客観的証拠の2つを明確化(要求事項はISO 9001:2000規格から)
  • 客観的証拠には4WIHを活用
  • 複数のサンプリング
  • 是正の方向が分かるような指摘の仕方を工夫

*要求事項とは、
  • 明示されたニーズ(規定要求事項=文書化されている要求事項)
  • 義務として要求されているニーズ(法規制等)
  • 暗黙の内に了解されているニーズ/期待
  • 利害関係者間の慣習・慣行
  • 極く当たり前の事項

(1)不適合の指摘、記述時の注意事項
  • 各監査員は、監査中に記録したチェックリストの内容を確認し、記録の中から不適合のみを識別し、是正処置要求書に不適合事項を論理的に記述すること。
  • 観察した状況が、要求事項を満たしていないことを特定し、これだといえる「客観的証拠」を示して表明すること。
  • 指摘のポイントとして、不適合の指摘の記述。
    1. 規定要求事項 「…すること。」
    2. 不適合の状況 「…していない。」「決めたとおりしていない。」「決めてあるがしていない。」etc.否定型
    3. 客観的証拠 監査後実証できる事実
  • 不適合を発見した場合、その不適合は規格のどの要求事項項目に対して不適合かを明確にすること。規格要求事項への関連付けは大変重要。

    発見された不適合は、規格要求事項のどの項目に対して不適合であるか?例えば
    1. 適用できそうな(できる)規格項目候補をあげる。
    2. 一番当を得た項目は何か、絞り込んでいく。
    3. 不適合を解決させるには何が必要か?不適合を適合にさせる活動は再発防止につながるかなどに基づき、一番当を得た規格項目とその不適合内容を特定する。
    4. 是正処置要求書(CAR)または不適合報告書(NCR)に記述する。

(2)不適合の記述、表明に際しての注意事項を列記する。
  1. 不適合一件に対して、一枚の是正処置要求書を記載する。
  2. 観察した不適合の状況などを監査後実証できる事実を明確に識別・特定し、そフ上で何の規定要求事項を満たしていないから不適合なのか、客観性のある論理的な記述。
  3. 主任監査員は、監査の結果をレビューし、監査の目的に対して、結果はどうなったかを把握すること。
  4. 不適合ではないが、管理レベルが低くて、人的なミスによって不適合が発生しそうな問題がある場合は、監査員で協議し、確認した後に被監査側に伝えること。
  5. 主任監査員は監査の目的に照らして、摘出された不適合の状況から監査の結論をどの様に述べるかをまとめてから最終会議(監査後ミーティング)に臨むこと。

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