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2004.04【特集記事−本誌編集部より−】
医療機器規格ISO 13485
−改正薬事法で対応必至−

 
ISO 13485は、ISO 9001をベースとした医療機器に関する追加要求事項を加えた品質マネジメントシステムのセクター規格です。1996年に誕生し、2003年7月にISO 13485:2003が正式にISO規格として発行されました。ヨーロッパへの医療機器輸出企業は、医用機器指定(MDD)への適合のためにすでにISO 13485が必須となっています。
2002年に公布されて2005年に施行される予定の改正薬事法においても、医療機器に関わる品質システム要求事項の内容はISO 13485:2003が骨格になると予定されています。



 世界的に普及したISO 9000シリーズを、医療機器に適用する場合、その要求事項のみでは不十分であるとの国際的な共通認識から、医療機器の品質管理の分野における要求事項の標準化と指針作成のためISO/TC 210が設立されました。1994年、ワシントンで第1回会議が開催され、1996年、ISO 9001:1994及びISO 9002:1994を基にして、次の規格が発行されました。

ISO 13485:1998   品質システム−医療用具−ISO 9001を適用するための特別要求事項 (Quality systems - Medical devices - Particular requirements for application of ISO 9001)

ISO 13488:1996  品質システム−医療用具−ISO 9002を適用するための特別要求事項 (Quality systems - Medical devices - Particular requirements for application of ISO 9002)

 我が国は、ISO 13485及びISO 13488の作成に積極的に参画してきました。1998年、それらを基にして国際一致規格JIS Q 13485及びJIS Q 13488が制定。
 10年間以上にわたる利用の実績と、問題点及び改善要望の調査分析を基に、ISO 9000シリーズは大幅に改正され、2000年12月、次の3種類のコア規格が発行されたのは皆様ご存じのとおりです。また、2002年、関連する監査の規格が発行されました。
ISO 9000:2000   品質マネジメントシステム−基本及び用語
ISO 9001:2000  品質マネジメントシステム−要求事項
ISO 9004:2000  品質マネジメントシステム−パフォーマンス改善の指針
ISO 19011:2002  品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針
ISO 13485:  1996及びISO 13488:1996は、ISO 9001:1994及びISO 9002:1994に医療機器固有の特別要求事項を追加した規格であるため必然的に改正が必要になり、ISO/TC 210は、ISO 9000シリーズ改正に合わせてISO 13485の全面的見直し作業を進めました。設計管理の有無によりISO 13485及びISO 13488に分かれていた規格が統合され、2003年7月、次の単一規格として発行されました。
ISO 13485:2003  医療機器−品質マネジメントシステム−規制のための要求事項(Medical devices - Quality management systems - Requirements for regulatory purposes)

 なお、ISO 13485:2003のための指針ISO/TR 14969の審議が進められており、2004年前半に発行される予定でありましたが、まだDISに進む段階のようで発行が遅れそうです。
 小センターでは、ISO 13485に対応するセミナー「医療機器ISO 13485入門講座」「医療機器ISO 13485実践講座」「医療機器ISO 13485内部監査員養成講座」を定期的に実施。実践的指導書として「医療機器ISO 13485:2003認証取得マニアル」を近刊の予定です。
 次頁では、ISO 13485に関して皆様が確認しておきたいと思われるであろうことをQ & A形式でまとめてみました。

<ISO 13485の規格の内容>
目次
まえがき
0 序文
0.1 一般
0.2 プロセスアプローチ
0.3 他の規格との関係
0.4 他のマネジメントシステムとの両立性
1 適用範囲
1.1 一般
1.2 適用
2 引用規格
3 定義
4 品質マネジメントシステム
4.1 一般要求事項
4.2 文書化に関する要求事項
5 経営者の責任
5.1 経営者のコミットメント
5.2 顧客重視
5.3 品質方針
5.4 計画
5.5 責任、権限及びコミュニケーション
5.6 マネジメントレビュー
6 資源の運用管理
6.1 資源の提供
6.2 人的資源
6.3 インフラストラクチャー
6.4 作業環境
7 製品実現
7.1 製品実現の計画
7.2 顧客関連のプロセス
7.3 設計・開発
7.4 購買
7.5 製造及びサービス提供
7.6 監視機器及び測定機器の管理
8 測定、分析及び改善
8.1 一般
8.2 監視及び測定
8.3 不適合製品の管理
8.4 データの分析
8.5 改善
附属書A(参考)ISO 13485:2003とISO 13485:1996との比較
附属書B(参考)ISO 13485:2003とISO 9001:2000の相違に関する説明
参考文献(省略)
解説

■医療機器ISO 13485 Q & A

Q.ISO 13485ってどんな規格?
A. ISO 13485は、医療機器に関する品質マネジメントシステムの規格です。ISO 9001を医療機器関連分野で役に立つように書き換えたものです。

Q.ISO 13485は強制規格だといわれていますが?
A. ISO 13485は自主的に取組むISO 9001やISO 14001と異なり、法律に組み込まれます。各国の法律で医療機器の製造メーカーに対して、ISO 13485に従ってマネジメントすることを求めています。
ヨーロッパ、カナダ、オーストラリアは、ISO 13485の1996版から2003版への法的規制の移行作業中です。日本(薬事法)は、平成17年より新たにISO 13485(2003年版)を採用します。アメリカはISO 13485に寄らず、独自のシステム(QSR)で規制しています(内容はかなり共通しています)。

Q.当然shallの数も多いのでしょうね?
A. 201のshallですね。

Q.ISO 13485:2003(改訂版)はどんな特長がありますか?
A. ISO 13485の初版は、1996年に発行されました(日本語版はJIS Q 13485)。これは、ISO 9001−1994年版に、追加の要求事項を加えたものでした。
ISO 13485は2003年7月に改訂され、ISO 9001−2000年版に合わせた規格になりました。現在JISは発行されず、TC国内委員会監修による対訳本が発売されています。
ISO 13485:2003では、ISO 9001本文をそのまま引用するのでなく、医療機器に合うように書き換えた上に追加項目が加えられました。
特に大きく変わったのは、この5項目の追加です。

6.4 作業環境 衛生管理について4項目の要求
7.5.1 製品及びサービス提供の管理 滅菌・洗浄、据付け、付帯サービスについて管理を要求
7.5.2 プロセスの妥当性確認 滅菌とソフトウェアの妥当性確認について要求
7.5.3 トレーサビリティ トレーサビリティを管理すべき項目が具体的に示された
8.5.1 改善 顧客への通知、苦情、不具合への対応について要求

また法令対応として

3.用語の定義は、法律が優先する
4.2.1 法令が求める手順の文書管理
4.2.3 文書の保管期間
4.2.4 記録の保管期間
5.5.1 出荷後製品の管理の責任者(Note)
5.5.2 MRで法令の制改定の情報をインプット
6.2.2 教育訓練の文書化された手順(Note)
7.3.6 臨床試験/性能評価(妥当性の確認)
8.1 統計手法使用の文書化された手順(Note)
8.2.1 出荷後の製品情報の収集
8.3 法的基準に合う場合のみ特別採用が可能
8.5.1 不具合の届出の手順を文書化
8.5.1 通知書発行の手順を文書化

Q.文書化も大変そうですね。
A. 約45〜46の文書作成が必要になりますが、うまく効率的に作成することが重要です。

Q.「継続的改善」と「顧客満足」がISO 9001と違うようですが?
A. 「継続的改善」と「顧客満足」がISO 13485に用語としてうまくそぐわないため、「顧客満足」が「有効性の維持」に変わりました。 「有効性の維持」とは「常に良い結果を出すために、必要な場合はシステムを変更(改善)する」ことです。 「顧客満足」はISO 13485 8.2.1で「顧客要求事項を満足しているかどうかに関する情報を監視すること」とあります。 「顧客要求事項への適合を、判断する」ためには、顧客やマーケットから情報を収集するということです。

Q.最後に、医療機器の概念はどこまで考えればよいでしょうか?
A. 当然診断装置から、注射針まで、機械、器具、材料、体外診断薬、ビンや手袋まで含まれる幅広い内容だと考えて下さい。

各国の医療機器の法規制・規格


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