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【連載:ユダヤ人の発想に学ぶ23】 〜ユダヤ人の健康法〜
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紀元前2世紀頃ユダヤの古典、ベン・シラ書には、「健康にまさる富はない」(30:16)と記されている。日本では、ユダヤ人には金持ちが多いとか、ユダヤ人はお金にうるさい民族だとか、とかく偏見に満ちた目線で彼らを眺める。だが、素顔のユダヤ人たちは、もっと別の点に気を使っている。それは、健康な生活への配慮である。 1.ビジネスの第1要件ビジネスには「ヒト、モノ、カネ」が必要だといわれています。なるほど、優秀な人材、魅力ある良い商品、そして豊富な資金があるに越したことはありません。では、これら3大要件が揃えば、ビジネスは上手くいくのかというと、そうではない。忘れてならない不可欠な第1要件があります。それは、企業に参加している全員の「健康」です。11世紀ドイツのラビ・エリエゼル・ベン・イツハクは、「自分の健康を過信するな。ひとたび横になるや、再び起きなかった者は多いのだ」と警告しています。 健康こそが、ビジネス遂行ための最大の資本なのです。そこで今回は、別の角度から改めて健康について考えてみます。 ビジネスにかぎらず、一般に人々がより多くの富を得ようとするのは、より豊かで、より楽しい生活をし、より長寿を満喫したいと願うからであります。長寿を得るためには、言うまでもなく、まず健康な生活を心がけることが肝要です。 ところで、最近、アメリカの長寿研究学会で発表された複数の報告では、長寿と大きく関係している3つの社会的要因が指摘されています。即ち、「教育・食事・老若の交流」です。 第1に、長寿は人種や民族などの遺伝的相違よりも、教育の影響のほうが大きいことです。これは、ランド研究所のジェームズ・スミス研究員が発表した研究成果です。教育は知識や技能をさずけるだけでなく、衛生観念を深め、人々に健康な生活を志向させるようにするからです。 コロンビア大学のアドリアナ・レライスの研究では、サンフランシスコの低所得者地区を調査した結果、収入の多寡や人種よりも教育の有無のほうが長寿との関係が大きいということが判セしています。子供達の教育に力をいれている中華街やイタリア人街の人々の平均寿命のほうが、他の貧困地区の人々のより長いのです。別の調査では、少年時代に1年間余計に学校教育を受けるだけで、35歳時の平均寿命が1年半伸びることも判明しています。 第2の要因は、食生活です。米国で長寿グループとして有名なのは、モルモン教(末日聖徒教会)の人々です。モルモン教はアメリカに発生したキリスト教の分派です。当初は一夫多妻制であったことに加えて、独自の教義を唱えたために、迫害されて住民がいないユタ州に集団で亡命しました。前回の冬季オリンピックが開催されたソルトレイクはユタ州の州都で、住民の大半がモルモン教徒です。彼等は努めて菜食主義に徹し、肉食を避け、植物性蛋白質でつくったトーフィ・ステーキや豆乳を愛用しています。酒もコーヒーも飲みません。そういう健康な食事が、かれらの長寿の背景にあることも判明しています。 第3に、中国人、イタリア人、モルモン教徒の社会に共通するもう一つの共通点です。老人が孫や若い世代と一緒に生活していることです。若者と接し、若さに触発されることも、長寿のためには、良い刺激なのです。 2.ユダヤ人の長寿の秘訣よくユダヤ人には金持ちが多いと言われますが、じっさいは貧乏人も多いのです。だが、ユダヤ人が概して中流の上クラスの生活レベルに達するのは、長寿だからでもあります。じつは、伝統的なユダヤ人社会は、上記の長寿のための3大条件、教育・食事・老若の交流を大切にしてきました。そのためでしょうか、彼等が永年にわたって迫害や流浪、離散にさらされてきた割には、古代、中世の時代でも70歳台、80歳台まで生きた人々が多数います。 第1に、まず教育です。今日では世界各国で義務教育制が採用され、国民の子弟全員の教育が当たり前のことのように思われています。ですが、ユダヤ人の社会では、2,000年以上も昔から、子供が6歳になるとヘデルと呼ばれる寺子屋に通わせ、読み書きを教えてきたのです。 13歳になる成人式の日までに、読み書きだけでなく、ユダヤ社会の掟など一通りの知識を習得させるようにしてきました。ユダヤ教の掟は、宗教上の戒律だけでなく、生活習慣、食物や衛生に関することまで含んでいます。 第2の食物ですが、ユダヤでは3,000年前から、食品は厳格な食物戒律で厳重に管理されてきました。まず生肉を食べない。血抜きをし、脂肪を落とした肉しか食べない。乳製品と肉を一緒に調理しないし、同じ食卓では食べない等々。この食餌規定のことを、カシュルートといいます。 例えば、アメリカの食品雑貨店では、缶詰めや瓶詰め、ワインなどのラベルの隅に、丸印の中に「 これは、カシュルート基準に適合した「コーシャ」と呼ばれる食品です。 日本からアメリカに向けて輸出されるセンベイやカキモチなどにも、ラベルの隅に、 そのために、ユダヤ教のラビがわざわざ日本の食品メーカーの工場を査察に来ます。そして、食品添加物などに混ぜ物がないばかりではなく、食品材料も製造装置も、製造手順もユダヤ教の基準にかなっているかどうか、細かくチェックします。その厳格な検査に合格した食品工場の製品にだけ 第3の老若の交流です。ユダヤの掟では、「白髪は老人の冠である」と宣言しています。年寄りだからといって若者が老人を避けるのではなく、尊敬をもって近付けという意味です。 赤ん坊がうまれると、たいていその子のお祖父さんやお祖母さん、または大叔父さんや、大叔母さんの名前をつけて、祖先の伝統を大切に記念しています。誕生後8日目の命名のさい、赤ん坊の将来を祝して、一族や近しい人々の中の最長老に祝福の祈りをお願いします。これも、ユダヤでは大切な行事です。 「青春とは年齢ではなく、心の持ち方である」という一句で有名なあの『青春』の詩の作者、サムエル・ウルマンですが、あの詩の背景には、息子や娘、甥や姪、そして多くの孫たちとの交流があったことを忘れてはなりません。その晩年に孫たちと一緒に撮ったウルマンの写真は、永遠の青年そのものの安らぎがあります。沢山の子と孫。これもユダヤ人の長寿の秘訣です。 3.塩とオリーブ油そういえば、先年のこと、コーヘン前駐日イスラエル大使には、当時103歳で、全く元気な祖父がおられました。その健康の秘密は、毎日コップ1杯の牛乳にスプーン1杯のオリーブ油を混ぜて飲む習慣があるからだ、と大使が語っておられました。日本人の身体は、体質的に動物性脂肪の消化吸収に適していません。ですが、ごく微量のオリーブ油や胡麻油であれば、こうした植物性油の毎日の摂取は、私たちにも良い効果があるのかもしれません。これに加えて、ユダヤ人の家庭では、毎食、まずパンに少量の塩をふりかけ、オリーブ油に浸してから食事をはじめます。塩も岩塩か天然塩が原則で、化学合成した塩は使いません。ですから、ミネラル分を豊富に含んでおり、これも身体に良いのでしょう。 それに、血抜きをし、熱湯を通して脂肪を落とした肉しか食べないことも、肉の消化を助けるだけでなく、病原菌の殺菌にも役立っています。ただし、厳格なユダヤ教徒は、豚肉、馬肉、エビ、カニ、タコ、イカ、貝などは、食べません。 4.ユダヤ人と手洗いユダヤには食事や健康に関するさまざまの掟や戒律があります。その中でも、衛生という点で最も重要なのは、食前に手を洗うという掟です。ユダヤ教徒の日常生活の全ての掟をしるしたユダヤ教戒律要覧「シュルハン・アルッフ」の第40則では、「パンを食べるさいには、パンを与えたまう神への感謝の祈りを唱えよ。その前に食前に両手を洗うべし」と命じています。 その祈りは、「大地よりパンを取り出したまう我らの神、世界の王よ、あなたを讃えます」とわずか一言です。 しかし、短い祈りでも、神聖な神を賛美するのに両手がけがれていては礼を欠く。だから、まず祈りのために手を洗えというわけです。それも「流水」で洗うことが条件です。ですから、ユダヤ教の家庭はもちろん、ユダヤ教の戒律を厳守するレストランでは、食堂の入口の近くに水瓶が用意されています。それで両手に新鮮な水を注ぎながら洗う。手水鉢などの溜め水ではいけない。これが、結果的には清潔な両手で食事をするということにつながり、伝染病の予防にもなるわけです。 事実、14世紀にヨーロッパ全土でペストが大流行したさい、ユダヤ人でペストに感染する者は非常に少なかったのです。ちなみに、その頃のヨーロッパ人の間では、入浴の習慣もあまりなかった。しかし、ユダヤ人は毎週、少なくとも金曜日の午後には入浴し、身を浄めてから、金曜日の夜からはじまるシャバット(安息日)を祝ってきました。これも彼等の衛生につながり、ユダヤ人を疫病感染から守ったのです。 たとえ富を手に入れても、健康で長寿を楽しめなければ、富は苦痛を増す。ユダヤ人は、古来、そう考えてきたのです。そして、病気にならないように注意をするというよりも、日々健康な生活を送ることを心がけてきたのです。 5.あなたへのアドバイス健康と長寿は、古代中国の伝説にあるような、東海の彼方、蓬莱山に伝わる仙人の不老不死の薬によって得られるものではありません。薬やサプリメントを服用して健康になるわけではありません。まずは、自分自身の内に健康な生命、健康な回復力が有るかどうかです。現代日本の社会は、つい半世紀前とくらべると、大幅に衛生環境が整っています。とはいえ、現在、日本の家庭で、あるいはレストランで、どれだけ食前の手洗いが励行されているでしょうか。また、帰宅したとき、まずウガイをするビジネスマンがどれだけいるでしょうか。 あなたは会社のビジネスや日々の業務の発展と拡大に心を砕いておられるでしょう。しかし、その前に、健康に、とりわけ衛生に、どれだけ気を使っておられるでしょうか。 |


