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2000.08【特集記事−本誌編集部より−】
検査業務の高付加価値化
─坂田真一講師にきく─


 
Q.先々は常々、検査の付加価値アップ。儲ける検査部門ということを提言されていますね。検査が品質保証的意味合いをもつためには?

A.坂田「検査は不良品を見つけてとり除く業務だと思っている人がまだいっぱいいます。そうじゃない。
 検査は単に品物の初期の一時点についてチェックしているにすぎない。実際に品が使われているときの寿命特性まで確実に保証することはできにくい。
 単に良品と不良品選り分ける検査結果だけで品質を保証するのではなく、すでに得られている品質に関する情報をもとに、残る危険性を除くために実際に調べるという作業を行う。
○品質について
品質が不満足な場合に、その原因がどこにあるかを判断し、速やかにその工程にフィードバックして、ふたたび不良が出ないように予防する機能。
○品質意欲の刺激
良い品物を検査に提供しようとする意欲に効果的な刺激を与えることは、検査の重要な機能である。
 今回のセミナー「不良品を見つけて取り除く検査業務から品質を保証する検査業務への転換法」(詳細は2頁をご覧下さい)も、そのような問題意識からの開講です。」

Q 検査計画のたて方のポイントは?

A 坂田「検査は、できあがった品物の品質を後工程やユーザー(顧客)に対して保証するという目的と、不良による損害を未然に防ぐという企業活動の経済化のために行われる。
 この観点に対して、ピントがはずれた検査の計画では無意味といえる。
 検査の計画といえば、概して統計的な、抜取検査の当てはめといった方法論的な検討に重点がおかれる傾向がみられる。
 これはあくまで検査に関する必須事項が合理的に確立されているという前提があってのことである。
検査の計画で検討すべき重要項目として 検査対象を決める、検査単位、検査項目、品質判定基準、検査設備の管理、検査点、検査結果の確認 等がある」

Q 検査の主体性についてどう考えられますか?

A 坂田「品物の良否、あるいはロットの合格・不合格の判定を下すだけで、検査の役割が終わったわけではない。その検査結果によってどういった品質のものが作られたかを評価し、品質が不満足な場合には、品質報として工程にフィードバックし、不良原因の除去を行ない不良の再発防止に役立つ活動を行う。
 そのためにはただ漫然と検査するのではなく、必要な品質情報が得られるように、検査の記録や報告書、方法などを事前に明確化しておく。
 また検査結果の事実に基づいて、その品質水準に適した検査方法を検討し改正を行ない、実績を将来の指針とすべく関連部門に対して働きかけ、サービスを行う。これが重要です。」

Q 工程間検査計画の進め方について

A 坂田「工程間検査の目的は、不良が次工程に持ち込まれないようにするために行う。一般的に工程が進みにつれて不良品の発見が困難になるほか、加工が施されてから発見された場合には、その損失が大きくなるために、なるべく前の段階から工程間検査を行った方が良い品物もある。
 工程間検査の結果は、製造工程の変動をいち早くつかむのに利用することができる。したがって、速やかにフィードバックすることにより、工程に適切な処置対策を施し品質を安定するうえで有効な手段である。
 工程間検査の場合には、受入検査の場合などと違って社内の製造上・技術上の情報が有効に利用できるので、実情に即した合理的な検査計画をたてることが可能である。
 たとえば、問題の多い工程は検査を強化するとか、反対に不良の生じるおそれのまったくない工程や特性項目は、ロットごとに試験を行わず他の品質情報・技術情報でロットの判定を行う無試験検査を採用するといったように効果的な検査を計画することができる。
 工程分析は通常、生産技術や工程管理部門が作成する。検査の立場で各工程間における検査の必要性と方法を検討し、工程分析に記載する。
 作業者が工程間検査方法に慣れているかチェックし問題があれば個別指導を行う。
 特に新機種や、モデルチェンジにより工程内容が大幅に変更したり、精度や純度等のレベル変更により、測定方法や検査治具・測定器の扱い方を新たにマスターする必要が生じた場合には、検査部門が対象工程又はライン全員に対し指導を行い、軌道に乗るまでフォローする。これが大切です。」

Q 受入検査の進め方についてお話し下さい。

A 坂田「原材料、部品または製品、あるいは加工を依頼したものを受入れる段階で行う検査を一般的に受入検査という。
 受入検査の目的は、生産工程に一定の品質水準のものを流すことであるが、一般にこの検査ではその結果で供給先に対する会計上の処置がなされるのが普通である。
 又、同一会社の他工場から供給される部品等の場合であっても、受入検査によって双方の品質責任が明確になる。
 受入検査では、双方の利害が相反するのが普通であるから、無用のトラブルを避けるために、品物の仕様、要求品質、検査方法などについて、あらかじめ協議し、あいまいな点を残さないように決めておく事が重要である。
 工場内での検査と違って、品質に関する情報は一般に不足しがちであり、単に受入検査だけで品質を保証しょうとする事は困難である。そこで、供給者側と受入側がたえず意志疎通を計り、供給者側は製造の状況を明らかにし、受入側は検査あるいは使用実績の詳細を供給側に連絡して、不良品がはじめから作られないようにする事が重要である。
 特に、受入検査では供給側に刺激を与え、良い品質水準のものを常に提供するよう品質意欲の向上を計る検査方法を採用する必要がある。」

Q 受入検査についてお話し下さい。

A 坂田「製品に対する要求条件が図面や仕様書に示されている場合でも、必ずしも全項目を全数検査するとは限らず、技術的・経済的にみて、検査する項目ごとに全数検査か抜取検査か、無試験検査かを決める必要がある。
 実際に検査を実施する場合には、時間・費用および工数が限られているため、検査を確実にしかも効率的に行うために、検査規格は判断が主観によって左右されないような内容であることが必要である。
 さらに検査結果を活用することまでも考慮して検査規格を作成することが望ましい。
検査規格の内容は、できるだけ具体的で、誰にでも容易に理解できるものであることが望ましい。必要ならば図解や写真などを併用して説明すると効果的である。」

Q 工程検査について

A 坂田「工程で発生する不良の大部分は、作業条件に問題がある。
 作業者が作業しやすいレイアウト
 工程がスムーズに流れるレイアウト
 作業者が安全に十分に能力を発揮できる環境条件を整備する事により、不良問題は解決できる。工程検査には次のようなものがある。

1.定位置検査と巡回検査

イ.定位置検査
 検査場を設けて行う検査であって、通常良く行われているやり方である。
 定位置での検査は、品物を一ケ所に集めて検査した方が良い場合とか、試験に特殊な機器、あるいは高価な測定器が必要な場合に、検査に必要な設備を検査室など特定な場所に集中して、品物をその場所に運んで検査するというやり方である。

ロ.巡回検査
 工程間で検査する場合に、途中に検査工程を設けないで、検査員が随時現場を巡回して、できた品物を検査するやり方を言う。
 巡回検査では、特に検査のために流れを中断する事が無く日程を短縮することができるほか、一連の品物ができあがってから検査する定位置検査と異なり、製造途中で頻繁に検査が行えるので、その結果を利用すると機械の調節や工程に対するアクションがとりやすくなる。

2.初物検査

3.自主検査(工程調節)

 工程管理といわれているもので、一定間隔で診断し、工程が正常だと判断されれば生産を続行し、異常と判断されたら、その原因を探求し元の状態に復帰して生産を再開する方法である。

Q 製品検査での重要なポイントは

A 坂田「製品検査(出荷又は最終検査)は製造工程の最終段階で、製品として完成したものに対して行われる。
 この製品検査を通った品物は購入者、消費者に渡るので、品質を評価する最後の機会という重要性をもっている。
 製品検査では社内の工程あるいは技術上の品質情報が有効に利用できるので、工程管理の状況および工程間検査との配分を考えて最終品質とか総合品質など最終段階でなければ検査できない特性項目などに限定した効率的な製品検査を進める。
 問題点と対策は検査員が任意裁量を行う、また品質判定基準が不明確なので明確に規定した検査規格検査作業基準を作成する検査員の意識向上をねらう。工程間検査との重複をさける等です。」


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