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2000.09【特集記事−本誌編集部より−】
ISO 9000:2000年FDISはこうだ!

 
 7月はじめのISO/TC 176京都総会でFDISへの移行の是非の議決の結果、DIS 9000、DIS 9001、DIS 9004はFDISにすすむことになりました。ここでは、DISからFDISへの変更点を確認するとともに、全貌を現したともいえるISO 9000:2000年版のポイントを紹介します。
 ISO/FDIS 9000への移行決議の投票では、まず、DIS 9000では、賛成24:反対0:棄権1(棄権はノルウェー)。
 DIS 9001では、賛成35:反対1:棄権3(反対は日本だけ、棄権はデンマーク、フィンランド、ノルウェー)。
 DIS 9004では、賛成33:反対1:棄権5(反対はフランス、棄権はカナダ、フィンランド、イスラエル、イタリア、ノルウェー)となり、すべてFDISへの移行を決定したわけです。

 DIS 9001での日本の反対の理由は、
  1. 規格表題にQuality Assuranceの表題を入れて欲しい。(FDISでは変更なし)
  2. 継続的改善は、製品の改善ではない。QMSのeffectivenessの改善であることの明確化を要望(FDISでは明確になった)
  3. プロセスモデル/プロセスアプローチの図の修正を提案したが、FDISでは拒否された。
  4. 2種類の品質計画があることの明確化を要求
    品質マネジメントシステムのレベルと、個別の製品、プロジェクト及び契約者に関連するレベルとの区分。これはNOTEに記述されることになる。
  5. 規格の構造:7節と8節を修正するよう要望
    7節:個別製品の実現プロセス
    8節:システムレベルの計測、分析、改善
    8節の製品の測定及び監視や、不適合品管理に関する記述は7節に入れるべきであると提案したが、一部修正されたものの曖昧なままになっている。
 その他の、6つの個別コメントを提出した。半分近くが取り入れられず、反対の決議となった次第。もう一度、日本の懸念を11項目にまとめてみますと、
  1. 規格の標題
  2. プロセスアプローチの図
  3. “Activity”と“Process”の混在
  4. “production”and“service operation”
  5. 品質計画(Quality planning)の明確化
  6. 文書(document)と記録(record)の区別
  7. NOTEにおける他の規格の参照をやめる
  8. 継続的改善(continnual improvement)の意味の明確化
  9. 監視(monitoring)と検査(inspection)の意味
  10. 顧客要求事項(Customer requirements)と製品要求事項(product requirements)の整理
  11. 不適合品管理(Control of nonconformity product)のフィートバックループで個別製品は第7章へ
 ということになります。(1) (2) (7)(11)はFDISには取り入れられませんでした。
 これで、ISO 9000:2000は、以下のような構成になります。

0.序文
  0.1 一般
  0.2 品質マネジメントの原則
1.適用範囲
2.QMSの基礎
  2.1 QMSの理論的根拠
  2.2 QMSの要求事項と製品要求事項
  2.3 QMSアプローチ
  2.4 プロセスアプローチ
  2.5 品質方針及び品質目標
  2.6 QMSにおけるトップマネジメントの役割
  2.7 文書化
    2.7.1 文書化の価値
    2.7.2 QMSで使われる文書の種類
  2.8 QMSの評価
    2.8.1 QMSのプロセスの評価
    2.8.2 QMSの監査
    2.8.3 QMSのレビュー
    2.8.4 自己評価
  2.9 継続的改善
  2.10 統計的方法の役割
  2.11 QMSおよび他のマネジメントシステムの焦点
  2.12 QMSと組織の優秀モデルの関係
3.用語と定義
  3.1 品質に関する用語
  3.2 マネジメントに関する用語
  3.3 組織に関する用語
  3.4 プロセス及び製品に関する用語
  3.5 特性に関する用語
  3.6 適合に関する用語
  3.7 文書に関する用語
  3.8 調査に関する用語
  3.10 計測プロセスの品質保証に関する用語
  ・Annex A用語の開発に用いた方法論
  ・参考文献
  ・アルファベット順索引

さて、DISからFDISで何がどう変わったのでしょうか? 全体的にいうと、解説部は大きな変化はなし、節のタイトルの簡潔化が進んだ。用語では新規5,削除10。
 主な変更点は
  1. 文書化に関する要求は5節から4節(4.2)に移された。
  2. Dermissible exclusionはApplicationとして記述される。
  3. Process Approachについては書き直され、PDCAサイクルについての記述が追加された。
  4. プロセスアプローチ図のタイトルは変更され、図にも若干の修正がなされた。
  5. productがintended product(意図された製品)だけを対象とすることや、productにはserviceが含まれることがNoteで記述された。
  6. 品質計画(Quality planning)は2つのレベルに分けて記述された。一つはシステムレベルの品質計画(5.4.2)、もう一つは製品ごとの品質計画(7.1)である、
  7. 7.2.1〜7.2.2は製品の要求事項の確定とレビューにまとめなおされた。
  8. 製品の受入れ検査(inspection)が追加された。
  9. Service operationはService provisionとなった。
  10. いわゆるspecial process(特殊工程)についての記述は7.5.2に移された。(章建てがISO 9004と異なる)
  11. Customer satisfactionは顧客要求への合致の程度に関する顧客の受け止め方を表すこととなった。
  12. 内部審査についてはobjectivity, inpartialityという用語で独立性(independence)に代わる概念を表す。
  13. Control of nonconformity(不適合の管理)はnonconforming product(不適合品の管理)のcontrolと置き換えられたが依然として8.3に記述されている。
  14. Continual Improvement(継続的改善)は、品質マネジメントシステムの有効性(effectiveness)の改善ということになったが、最終的にはContinual Improvementという用語は残された。
  15. Periodicという語が誤解を防ぐためにdefined intervalという語を使用した。 この15点ということになります。
 全体的には、ISO 14000との整合性が強く求められており、多少無理やりの感なきにしもあらずというところです。又、要求事項は一般的になったと同時に不明確になったともいえますから、ガイダンス文書、解釈文書が充実しなければならないでしょう。
 問題のプロセスアプローチ図もISO 14001との両立性が強く意識されているため、個別製品の品質達成のPDCAが見えないのは日本が抗議したとおりです。結果的には、ほとんど変わらない図が「プロセスに基づいた品質マネジメントシステムのモデル」となっている。



図1:プロセス・アプローチのモデル


図2:プロセスに基づいた
品質マネジメントシステムのモデル



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