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2000.12【特集記事−本誌編集部より−】
不良3ない作戦
──不良を入れない、つくらない、出さない──

 
改善技術研究所所長
工程改善コンサルタント
竹内 均氏

 2頁でご案内している「不良を入れない、つくらない、出さないしくみづくりのノウハウ」の講師 竹内均先生に、不良3ない作戦をまとめていただいた。

 儲かる生産工場を目指すためには、不良対策がまずポイント。ここでは不良対策として、不良を入れない、つくらない、出さない─3ない生産方式を提案する。
 利益を追求しない生産工場の経営者は1人もいないだろう。ところが、利益を生み出す定石を知らない経営者は大勢いる。ちょっとでも赤字がでると、「親企業のコストダウン要請がひどい。だから、儲からない」とか「小ロット発注に伴い段取り時間が増大している。だから、儲からない」というように、他罪主義の発想になる。
 生産工場において利益を生み出す定石は、次式の意味をまず理解することである。

利益率
(r0)=付加価値率(v0)−固定費率(K0)

 付加価値率(v0)とは「入り」である。固定比率(k0)とは「出」である。入りを図りて出ずるを制すれば、自ずと利益(r0)は生み出せるという法則である1)。
 モノづくりの現場で付加価値率(v0)をアップするもっとも簡単な方法は、不良を減らし、歩留りを向上させるモノづくりの改善を実行することである。ところが、どこでどう間違ったのか知らないが、「不良対策、即、統計的品質管理(SQC)」、「不良対策、即、QCサークル活動」などと早合点してしまい、モノづくりの改善に役立たない管理図を書いたり、QC工程表や作業標準表を作成したりと、書類づくりにエネルギーを使っているから儲からないのである。
 ここでは、生産工場で儲けるためには、どのような不良対策を実施したらよいか、不良を入れない、つくらない、出さない─3ない生産方式を提案してみたい。
 “でけへん”幹部の多いところでは、必ずといってよいほど設計品質に工程内不良の原因の多くがあると主張するが、公平な目で見渡してみると、手作業が多くモノづくりが下手で「設計品質30%、製造品質70%」ほどになっていることが多い。一方、設計品質の悪い工場では「設計品質90%、製造品質10%」であったり、生産工場では金型設計の開発ルートがなく、あるいは、あっても守られていない場合、例えば設計試作(1次試作)の後、ただちに量産に入ったり、工程設計(ライン設計)を行っていない場合は「設計品質70%、製造品質30%」といったケースもある。
 このように工場によって設計品質と製造品質の不良への寄与率は異なるので、相手をよくみて(状況をよく認識して)対策を施していかなければならない。したがって、生産工場の場合は、「金型の設計品質よしあし点数評価制度」の導入からスタートすることをお薦めする。
 1次要因分析が終わったら、つぎは2次要因分析にとりかかる。では、その攻め方を説明しよう。
 発想の基本は、“不良をつくらない3手観音”である。まず、出荷検査工程の不良率把握からはじめる。仮に5%であったとすれば、つぎに、その原因を設計品質に起因するものか、製造品質に起因するものかに分離する。設計品質のなかには、製品設計、設備設計、金型設計、治具設計、工程設計(ラインづくり)なども含める。
 通常は設計品質70%、製造品質30%ほどであることが多いが、儲かっていない生産工場では、設計品質30%、製造品質70%としてスタートすることだ。他罪主義を防止するためである。
 つぎに、設計品質、製造品質ごとに外から入ってくる不良、モノづくりによる不良、不良を外に出してしまう検査の不良の3つに分類する。ただし、各項目は、図1のようにポジティブに表現する。不良を入れない、つくらない、出さない仕組みに分類できたら、各項目の不良への寄与率を決める。各項目別の順位投票などを行って決めてもよい。
 今回、設計品質についての詳しい解説は省略するが、そのポイントはつぎのとおりである。
 (1) 設計で不良を入れない仕組みとしては、「仕様決定シートの作成」を行い、営業担当者にもたせるようにする。とくに、金型仕様については重要である。
 (2) 新機種受注時に設計不良をつくらない仕組みとしては、「設計はしても新図を描かない設計法」の導入が重要である。また、「設計品質のよしあしを点数で評価する制度」の導入や、「合格しなければ再設計または出荷停止にする方法」を確立することも大切となる。
 (3) クレームを出さない仕組みづくりとしては、「設計品質どおりの工程設計」を行うことがポイントである。生産工場でちょっと複雑な仕様の製品を受注したときに不良が発生する原因の大半は、工程設計をしていないからだ。生産技術担当者の任務は、この工程設計にあるといっても過言ではない。
 (4) クレームおよびコンプレイント対策として、設計担当者は「不良原因のメカニズムを解析する方法」を体得する必要がある。生産技術者として、その技法をマスターしていないと現場から信頼されない。
 以上の5点が設計品質についてのポイントである。つぎに、製造品質に絞って、3ない生産方式の論を進めよう。

不良を入れない仕組みづくり

 一般的な項目として10項目(図1参照)をあげたが、まずは何といっても、製造部門に不良材料や不良部品を投入しないことである。そこで第1歩として、現状の実態把握からスタートする。
 生産工場の場合は、1.受入れ検査の実態把握として、材料メーカー別の材料不良率の実態調査からはじめる。例えば、材料メーカー別の受け入れ検査の結果と、工程内不良、出荷検査時の不良との関係がどうなっているかを調べる。もし、材料不良が出荷検査時の不良と直結していれば、材料不良対策に着手する。例えば、不良の多いB社からは購入量を半減するとか、または、B社のみ特別の処理を施すなどというように、つぎに、2.材料や部品のワースト5と工程内不良との相関性を調べ、3.検査設計の見直しや4.外注不良対策などを実施していくが、詳しくは後述する。
 何はともあれ、まず、やるべきことは不良材料、不良部品を投入しないことである。不良材料不良部品を投入している限り、良品は生まれてこない。

不良をつくらない仕組みづくり

 良品の材料、部品を投入しても、モノのつくり方が悪ければ不良は発生する。11項目あげているが、重要なポイントは、1.最適加工条件の設定、2.チョコ停対策(瞬間保全の普及)、3.段取り改善(加工基準不動の原則)、4.管理区間ごとの不良対策(赤箱対策)、5.1個づくり・1個検査である。
 とくに、生産加工においては、「赤箱対策」と「加工基準不動の原則」に的を絞って、GQC(現場技術的品質管理)の技法を確立することが大切だ。

不良を出さない仕組みづくり

 これは出荷検査によって、得意先に不良品を納入しない仕組みをつくることをいう。クレームという出血が多いときは、まず、止血することが最優先である。たとえば、3件/月以上のクレームが発生するときは、クレームを出さない止血法として、1.順次点検法、2.ダブルチェックで現状の工程内検査精度をつかむ、3.検査方法の改善(工程内の順次点検の実施)、4.ポカよけの設置、5.検査の簡易自動化、6.検査員認定制度(検査員別クレーム集計表で評価)の6項目に取り組む。
 この6項目を実施すれば、クレームという出血は止まる。
 3つの仕組みづくりをうまく実施するための付帯条件として人質(じんしつ)管理があげられるが、求められるのは何といっても工場長の実践能力である。※また、会社として工場長が改善をやりたいという衝動にかられるような仕組みをつくることが人質管理なのである。※ここでいう能力とは知識力×問題解決力×行動力の積で決まるもので絶えず自分で問題解決のイメージ訓練などを行う必要がある。

●参考文献:関根憲一:「工程ばらしマニアル」「付加価値達成マニアル」
新技術開発センター刊

図1 不良を入れない、つくらない、出さない
―3ない生産方式の仕組みづくり






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