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2001.01【特集記事−本誌編集部より−】
ISO 9000:2000年版にどう対応するか! (1)
──2000年改正規格の要旨──

 
阪本三郎 氏
阪本技術士事務所所長,茨城県技術士会会長
ISO 9000品質システム審査員(JAB,IRCA)
(社)日本技術士会PJT環境
マネジメントセンター会長,環境審査員
国際環境アドバイザー

白石正彦 氏
白石技術士事務所所長
技術士・化学部門

吉田秀夫 氏
NECファクトリエンジニアリング
ISO支援部担当マネージャー
技術士・情報工学・IQA/IRCA
Provisional TicklT Auditor (A007197)
JAB主任審査員 (A0234)
当連載は、「ISO 9000審査登録事業所のための2000年改正:社内規定新規追加変更事例集」(改定新版)より。具体事例は2000年正式版に対応しています。



 ISO 9000:2000年改正版がいよいよ発行された。我々は、正式版に対応して、企業がどのように従来の品質マニアル及び規定類を追加変更していかねばならないかを、数回にわたり事例をあげて公開する予定である。今回はまず、そのプロローグである。

I.改正規格の要旨

改正規格の要旨は、組織(企業)をエクセレントカンパニーに導くための方法論を提供することにある。そのため「品質マネジメントシステム12の基本」を示し、品質方針、品質目標を達成するための品質マネジメントシステムをどう構築して行くか。
また「品質マネジメントの8原則」によって品質に関する組織をどう運営管理して行くかに焦点を当てている。
以下に、「改正規格での品質12の基本」と「改正規格に基づく品質マネジメントの8原則」について述べる。

1.改正規格に基づく品質マネジメント8原則

改正規格は次の8つの品質マネジメント原理に基づいて策定されている。経営を成功させ、質の高い経営を実現するための普遍的に適用できる8つの品質マネジメントの原則がある。
企業(組織)は、以下に述べるこの8つの品質マネジメントシステムの原則を適用させ、PlanとDoを重視したプロセスマネジメントによって、利害関係者である顧客、株主、従業員、供給者、地域社会と社会全体に利益をもたらす事ができる。

(1) 顧客志向
  1. (原則)
    企業(組織)は、顧客に依存しており、それゆえ現在及び将来の顧客ニーズを理解し、顧客要求事項を満たし、顧客の期待を超えるように努力すべきである。

  2. (Plan)
    1. 品質目標は、直接顧客のニーズと期待を結び付ける。
    2. 顧客及び利害関係者のニーズと期待のバランスを取ってアプローチする。
    3. 顧客のニーズを満たすために企業(組織)の実績の向上を目指す。

  3. (Do)
    1. 顧客満足、不満足を測定して、結果について行動を起こす。
    2. 顧客のニーズと期待を組織全体に伝達する。
    3. 従業員に顧客満足させるための能力を身に付けさせる。
(2) リーダシップ
  1. (原則)
    リーダは、企業(組織)の目的、方向及び内部環境を一つにまとめ上げる。リーダは、人々が組織の目的を達成することに参画できる環境を創り出す。

  2. (Plan)
    1. 企業(組織)の明白な将来ビジョンを確立する。
    2. 将来の企業(組織)のビジョンを確立して伝達する。
    3. 企業(組織)のビジョンを計測可能な目標に変換する。

  3. (Do)
    1. 目標を達成するための戦略を実践する。
    2. 説明責任をもつ行動するために必要な経営資源と自由度を社員に与える。
    3. 目標を達成させるために社員を積極的に参画させる。
(3) 人々の参画
  1. (原則)
    すべての階層の人々は組織にとって不可欠なものであり、その全面的な参画によって、企業(組織)の便益(業績)を最大にするためにその能力を活かすことが可能となる。

  2. (Plan)
    1. 顧客のための価値創造に焦点を当てる。
    2. エンパワーメント(個人への権限委譲)を強化して、方針及び目標の達成、業績改善及び業績向上を図る。
    3. 知識や経験を共有し、活用するナレッジ・マネジメントシステムを構築する。

  3. (Do)
    1. 自らの責任で問題解決を図り、仕事から満足を引き出す。
    2. 能力、知識、経験を深める新機会と捉える。
    3. 実績があがるまでプロセスの改善に力を入れる。
(4) プロセス・アプローチ
  1. (原則)
    関連する経営資源及び活動が一つのプロセスとして運営されるとき、望ましい結果がより効率的に達成される。

  2. (Plan)
    1. 顧客及び利害関係者に関わるプロセスのリスクを分析し、影響度合いを評価しコアプロセスを特定する。
    2. アカンタビリティ(説明責任)を明確にしてプロセスを管理する。
    3. 望ましい結果を達成するためにプロセス、活動ステップ、業務の流れ、管理項目、教育ニーズ、装置、方法論、情報、原材料、その他の経営資源を規定する。

  3. (Do)
    1. 到達可能な目標を策定する。
    2. すべての業務にプロセス・アプローチを採用して、経営資源のより優れた利用、コスト削減、エラー防止、バラツキ低減、サイクルタイム短縮などの結果を得る。
    3. 人的資源の管理プロセスを確立して、社員の能力開発を行う。
(5) マネジメントへのシステム・アプローチ
  1. (原則)
    所与の目標に対して相互に関係付けられたプロセスからなるシステムを明確にして、理解し、運用することは、企業(組織)の有効性および効率に貢献する。

  2. (Plan)
    1. 目標をもっと効率よく達成するためのシステムを構築する。
    2. 与えられた目標に影響を与えるプロセスを特定することによりシステムが明確になる。
    3. システムのプロセス間における相互関係を理解する。
    4. 測定と評価を通じて連続的に改善する。
    5. 経営資源の制限事項を規定する。

  3. (Do)
    1. 各プロセスの目標は、企業(組織)の目的に連携している。
    2. 原因分析を行いタイムリーな改善活動を行う。
    3. 部門間の壁を取り除きチームワークを育成する。
(6) 継続的改善
  1. (原則)
    企業(組織)の永遠の目標は継続的改善である。

  2. (Plan)
    1. 継続的改善と経営計画を統合する。
    2. 製品、プロセスおよびシステムの継続的改善が、企業(組織)のすべての個々人に対する目標である。
    3. プロセスの継続的改善に参画させる。
    4. すべてのプロセスの有効性と効率を継続的に改善する。
    5. 改善を評価して表彰する。

  3. (Do)
    1. 予防を基本として、改善を促しトレースするための尺度と目標を策定する。
    2. 企業(組織)のすべてのメンバーに対して適切な教育と訓練を行うこと。
      1. PDCAサイクル
      2. 問題解決ツール
      3. プロセスリエンジニアリング
      4. プロセス変革
    3. 関係する人々に継続的改善手法を提供する。
(7) 意思決定における事実に基づくアプローチ
  1. (原則)
    効果的な決定は、データ及び情報の論理的又は直感的な分析に基づいている。

  2. (Plan)
    1. 関連データと情報に基づく意思決定。
    2. 関連データと情報は改善を導き、予防問題に役に立てる。
    3. 適切な統計的手法の使用を図る。

  3. (Do)
    1. 測定して品質目標に関連したデータと情報を収集する。
    2. 有効な統計的手法を使用してデータと情報を分析する。
    3. 合理的なデータと情報の分析に基づいて決定し行動する。
(8) 供給者との互恵関係
  1. (原則)
    企業(組織)および供給者の価値創造能力は両者の互恵関係によって高められる。

  2. (Plan)
    1. パートナーシップで優位な競争力を創造する。
    2. ビジネスパートナーとの挑戦的な品質目標を確立する。
    3. 重要な供給者を評価し選別する。
    4. 長中期的なバランスを取れた供給者との協力関係の確立。
    5. 供給者の改善と品質目標の達成度を評価し表彰する。

  3. (Do)
    1. 製品とプロセスの共同開発と機能改良を行う。
    2. 不適合品ゼロの品質を確保する。
    3. ビジネスパートナーとの改善努力を通じ供給者の能力を高め、成長させる。

(以下次号)


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