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財団法人日本適合性認定協会
専務理事 井須 雄一郎
1.我国の現状
日本においては、国際規格に基づく製品認証制度は、残念ながら諸外国に比べて普及しているとはいえない状況にある。
元来、製品認証は強制分野との関連が強いが、強制法規に基づいて政府が特定の検査機関、試験所、認証機関等を指定し、その製品の安全性、性能及び健康性を確保してきた仕組みが、今日まで長く続いていたことが大きな理由としてあげられる。
一方、任意の分野でも、その必要性が必ずしも十分に認識されていなかったため、制度の立ち上げが遅かったことも事実であった。
このため、強制分野において、任意の認定制度の活用はほとんどなかったのが実状である。
しかしながら、WTO/TBT協定の要請、規制緩和の推進、国際的な相互承認の実現等を背景として、日本でも国際規格に準拠した製品認証制度を早急に立ち上げるべきとの機運が高まっている。
従来、このニーズに対応する認定機関が日本にはなく、製品認証機関はやむを得ず海外の認定機関から認定を取得するケースがあったが、2001年4月よりJABがこの分野の事業を開始したので、産業界にとっては朗報となった。
現在、規制緩和の一環及び政府間相互承認の進展に伴い、強制法規による製品認証の仕組みが透明性、公平性、効率化の観点から見直されており、今後、この分野において国際整合化や民間制度の活用が期待されている。
欧米諸外国でも、当所は規制当局が自ら試験や検査を実施していたが、小さな政府を実現する方針の下、相互の信頼感を確保しながら徐々にこれを民間の制度を活用するようになった歴史がある。
日本においても、民間の製品認証制度を強制分野で活用するには、規制側の本制度に対する信頼感の醸成が必須であり、根幹となる法体系の整備、技術力の確保、規格の整備、適格な審査員の確保等、制度全般について相互に理解を深めていくことが必要である。
2.製品認証機関の認定機関
現在、日本には2つの製品認証機関の認定機関がある。以下にその概要を示す。
- (1)(財)日本適合性認定協会
(The Japan Accreditation Board for Conformity Assessment)
- 1993年に民間の非営利機関として品質マネジメントシステムの認定機関として設立されたが、1996年に寄付行為の改定を行い、環境マネジメントシステム及び試験所認定にも業務を拡大した。その後、産業界の要望に応えて、2001年4月から国際規格(ISO/IECガイド65)に基づく製品認証機関の認定を開始した。
- JABは、IAF及びPACの品質マネジメントシステムに係る相互承認メンバであり、かつILAC及びAPLACの試験所認定に係る相互承認メンバである。
- 製品認証に係る認定機関間の相互承認の仕組みは世界レベルではまだないが、現在PACやIAFで鋭意準備中である。
- (2)JISマーク表示認定制度(JASC)
- 民間における品質システム認証制度の広まり、TBT協定の要請、規制緩和等の観点を踏まえ、従来、政府のみが認証業務を行ってきたJISマーク表示認定制度に、民間会社を含む内外の民間機関を活用する制度が導入された。(工業標準化法第19条)
- 当該民間機関については、主務大臣が国際規格(ISO/IECガイド65)を基礎として認定するものである。
- この制度は、主務大臣が指定する品目(指定品目)について、政府許可(国内事業者)又は承認(海外事業者)を受けた生産者が、製品等にJISマークの表示を行う制度である。約4,300のJIS製品規格の内、約1,300規格(約800品目)に限って制度を運営している。
- JASCはPACのメンバであったが、2000年にIAFのメンバにもなった。(以下次号)

図表−1 JISマークの表示スキーム
- (注)
- IAF(International Accreditation Forum, Inc. 国際認定フォーラム)
- PAC(Pacific Accreditation Cooperation, 太平洋認定協力機構)
- ILAC(International Laboratory Accreditation Cooperation, 国際試験所認定協力機構)
- APLAC(Asia Pacific Laboratory Accreditation Cooperation, アジア太平洋試験所認定協力機構)
- JAB(The Japan Accreditation Board for Conformity Assessment, 日本適合性認定協会)
- JASC(Japan Accreditation System for Product Certification Bodies of JIS Mark, JISマーク表示認定制度)

図表−2 JABの組織
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