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2001.11【特集記事−本誌編集部より−】
企業にインパクトを与える試験所認定
──ISO/ IEC 17025の新潮流──

 

ISO 9000、ISO 14000のマネジメント認証取得企業が続々と赤字計上するという厳しい経営状況下において、マネジメントシステムだけでは、ビジネスを後追しするわけではないことが明確になってきております。おのずと、目的が製品認証やそれを補完する試験所・校正機関認定に向かうのは当然の勢いです。製品認証については、当誌で4ヵ月に渡って連載いただきましたので、詳細はそちらにゆずるとして、現況下における試験所認定の新しい動向や将来の方向性を探ってみて下さい。

試験所認定制度の必要性が最初に検討されたのがEMC(電磁両立性)試験所でありました。「EUの製品安全指令」(CEマーキング制度)によると、電磁気障害を発生する、または影響を受ける、機器(他で規制されているものを除く)が対象となります。これらの機器は(1)国際電気通信連合(ITU)に規定される電波通信機器、(2)上記以外で統一規格に適合しているもの、及び(3)適合しないものに分類されます。(1)については、「EC型式試験証明書」+「製造者による型式への適合宣言」が(2)については「内部生産管理」、(3)第三者発行の技術文書または証明書を含む製造技術文書の準備を伴う「内部生産管理」が適用されます。(1)や(3)は第三者(認定試験所)の発行する証明書が必要ですし、(2)は生産者の内部生産管理で自己適合宣言するだけでOK。その適合宣言を行うときに裏付けとなる技術文書を発行する試験所は認定が必要とは規定していませんが、自己適合宣言の重みからいって、EUでは認定試験所であることが共通の認識となっています。

我国の企業でも、今後、製品を保証し、顧客の要求に応えることが、第一に取り組むべき業務になるのではないでしょうか。
そのためには、製品の認証あるいは、製品の自己適合宣言とその根拠としての信頼性のある試験所から発行される試験結果の報告書が必要となります。
試験所・校正機関という用語は、かなり一般化したように思うが、日本ではあまりなじみがない用語です。試験所・校正機関はISO/IEC Guide 25のJIS版JIS Z 9325「校正機関及び試験所の能力に関する一般要求事項」の中で、Laboratoryという単語にその訳を当てはめたもので、Testing laboratory(試験を行う試験所)とCalibration laboratory(校正機関)の両者を含んだ概念です。試験を行う試験所は日本では一般に研究所、分析所、試験室あるいは後出の検査機関と紛らわしいが、官庁では検査機関と呼ばれてきているものの一部までが含まれると考えられます。試験所の機能は中立の立場で試験の依頼者に校正証明書または試験報告書を提供するところです。

試験報告書は試験所のアウトプットとしての製品であり、認定試験所では認定機関のロゴをそれに表示するのが一般的です。認定機関のロゴが表示されていれば、その試験報告書は国際規格に基づいて信用を付与されて、国際相互承認された国々の中で、受取り手が製造者の製品を再度確認試験することなく安心して取引を行えます。また同じ目的で自己適合宣言の根拠を提供するものでもあります。認定試験所であれば適用国先規格に基づいてデータの根拠を確保し得る形になっているので、消費者を保護することにもなります。 試験所認定制度とは、認定機関が所定の基準に基づき、試験所の審査を行い、試験を行う能力を有していることを認定する制度です。「認定」は英語のAccreditationであり、「認証」はCertificationです。ISO Guide 2によれば認定はある組織が特定の仕事を行う能力があることを権威ある機関が公式に認める手続きであり、認証は製品、プロセスまたはサービスが要求事項を満たしていることを第三者が文書で保証することです。認定と認証の違いは仕事をする能力を判定するか否かです。ISO 9001/9002は認証(QMS認証制度の中で、日本では審査登録と称する)にISO/IEC 17025は認定に適用されます。

今、将来の読める企業の中で急激に増加しているのが企業の中の試験部門、検査部門を独立させる動きです。
分社することによって、組織をスリム化すると同時に製品の自己適合宣言を独立させた試験部門、検査部門で保証させるわけです。当然、その独立した試験所・検査センターはISO/IEC 17025を取得していることが必須になります。
当然、将来は品質保証部門の独立もにらみながら、新しい競争力をつけ始めた企業が走り始めております。是非、遅れをとらないように、戦略的思考でこの分野をとらえ直すことが勝者への道だと思われます。



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