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派遣社員や請負社員が増加してくるとその組織の弱点がより強調されてくと考えている。例えば、不良などの不具合が発生している職場では、さらに不具合の発生が増加する可能性がある。安全面から事故が発生している現場では事故の増加が懸念される。
すなわち、派遣社員や請負社員を活用するために重要なポイントは、これらを受け入れる組織の体制や準備にあると考える。派遣社員を受け入れる職場の管理者や監督者、および一般社員の心構えや姿勢が大切になるのである。派遣社員を受け入れるならば受け入れるための準備に怠りがないようにしなければならないのである。そのポイントをまとめてみた。
I.派遣(請負)型アウトソーシングの問題点
- 教育に時間がかかる
製造現場における派遣(請負)型のアウトソーシングは受け入れたらすぐに戦力化できることは先ずない。自社の仕事の進め方をきめ細かく指導教育しなければならない。しかし、この教育にはかなり時間がかかる。即戦力はありえないことを十分に理解することが必要である。
- なかなか仕事を覚えない
これは人によりかなり差があるものだが、仕事を覚えるのに時間がかかるもの。受入企業が事前期待している時間よりはかかるというのが一般的なようである。派遣社員が年配者である場合はその傾向は顕著である。
- 仕事を教えても長つづきしない、すぐに辞める
仕事を覚えてこれからが戦力になるというところで辞める者がいる。1日や2日で辞めるのはまだましである。1ヶ月教えてやっと戦力になりかけたところで辞めるのが最も困る。正社員より派遣や請負社員はやはり辞める確率は高いものである。
- 急に会社を休む
急に会社を休む傾向があることも問題点の一つである。若い正社員にもこの傾向があるが派遣(請負)社員はこの傾向が強いものである。そのために作業計画通りの生産ができないことにつながることになる。
- 仕事のトラブルが多く発生する
仕事の進め方を十分に習得しないまま仕事に従事させることから仕事のミスが発生することにつながる。また、仕事を進める基本動作を身に付けていないことが原因で事故を起こすことがあるなど、さまざまなトラブルが発生する可能性が高くなる。
- 若手社員に悪影響をおよぼす可能性がある
派遣(請負)社員は一般的には年齢の若い人が多い。しかし、年齢の割には多くの会社を経験している。その経験を若手の社員に話すことも多くなる。その時に派遣先である自社の悪口などを話すと若手社員にとってはかなり刺激になってしまう。派遣社員と一緒に若手の社員も辞めるということにつながってしまう。
- できる社員には仕事の範囲が拡大してしまう
仕事のできる社員にはいつの間にか仕事の範囲が拡大してしまう。このこと事態がすべて問題ということではないが、管理監督者が管理しないまま派遣(請負)社員の業務範囲が拡大することは好ましい形ではない。気がつけば起業のコア・コンピタンスの技能までもアウトソーシングしてしまっては企業にとって問題である。
II.アウトソーシング管理
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- アウトソーシング管理とは
アウトソーシング管理の基本は、P(計画)―D(実施)―S(評価)のサイクルを
回すことである。
- アウトソーシング計画のチェックポイント
チェック項目は次のような項目である。
- アウトソーシングに対する経営方針を社員に対して説明と浸透ができているか
- 社員は経営方針を理解できているか
- 現場の管理監督者や社員に対しての教育は実現できているか
- 請負の場合、請負会社との業務計画が共有できているか
- 請負の場合、進行管理のしくみは確立できているか
- 業務報告の方法は確立できているか
- 派遣(請負)社員への指導教育の計画は設定されているか
- 指導教育の事前準備はできているか
- 指導教育の役割分担は明確か
- 異常の発生に対しての対応策は十分検討されているか
- 派遣社員とのコミュニケーションはとれているか
- 請負社員とのコミュニケーションはとれているか
- 報告のしくみは機能しているか
- 派遣(請負)社員への指導教育は計画通り進んでいるか
- 指導教育での障害や問題は何か
- 仕事を進める上での問題は発生していないか
- 派遣(請負)社員の安全面での行動に問題はないか
- 特別休みが多い派遣(請負)社員はいないか
- やる気を失っている派遣(請負)社員はいないか
- 管理者・監督者・一般社員・請負会社の責任者の役割分担は的確に機能しているか
- 派遣(請負)社員の仕事振りはどうか
- 仕事の指示に対しての動きはよいか
- コミュニケーションで改善すべき点は何か
- 指導教育は計画通り実行できたか
- 指導対象者は能力向上の目標は達成したか
- 指導教育での改善点は何か
- 仕事の報告などに問題点はないか
- 派遣社員の仕事振りは派遣会社にフィードバックされているか
- 請負社員の仕事振りは請負会社にフィードバックされているか
- マネジメント全般で改善すべき点は何か
III.アウトソーシング管理のポイント
- アウトソーシング管理の目指す方向
アウトソーシング管理の目指すべき方向としてはマネジメントのスピードアップにある。製造のアウトソーシング導入する重要な目的の一つが生産変動への対応である。
生産変動に迅速に対応するためのマネジメントのスピード化が重要となる。
- 現状把握と問題予測
- 業務量の先行情報の早期把握
派遣社員や請負会社により、生産量の変動に対応するためには業務量の変化をいち早くつかむことが必要である。そのためには営業部門や生産管理部門からの情報を先取りして対応する体制づくりが必要となろう。
生産量の変動が見込まれる場合にはその情報を迅速に派遣会社や請負会社に連絡し、人の手配などをスピーディに実現する体制づくりも重要となる。
- 職場のネック工程の見える化
生産活動のネック工程はどこか、ネック工程の能力と負荷のバランスはどのような状況か、ということを迅速につかむ体制が必要である。生産能力面からのネック工程を派遣社員や請負会社に任せているような状況では特に重要となる。
そのためには生産の状況が一目で分かるような仕掛けを構築し、ネック工程の能力と負荷のバランスの見える化を実現することがポイントである。
<ネック工程の能力と負荷のバランスの見える化>
- 仕掛品量の基準化による見える化
- リアルタイムでの生産計画と生産実績の差の見える化
- キメ細かい報告の仕組みづくりで見える化
- 派遣(請負)社員に仕事を任せた場合に発生する問題予測
派遣(請負)社員に仕事を任せた場合に発生する可能性のある問題を予測し、事前に手を打つことが必要である。すなわち派遣や請負に仕事を任せた場合にどのような問題が発生するかを想定し、想定された問題に対して事前に対応策などを準備しておくことが必要である。
- 何を問題に感じているかを定期的に問題の吸い上げ
派遣(請負)社員がどのような問題に悩んでいるか、どのようなことに困っているかなどを定期的に吸い上げ、受入会社の管理者・監督者、および請負会社の管理責任者が受け止めることが必要である。そのためには派遣(請負)社員とのコミュニケーションが重要になってくる。コミュニケーションを円滑に実施するポイントについては改めて記述する。
- 問題に対する解決状況をマップにより見える化
吸い上げられた問題点についてはその対応や解決方向について、正社員はもちろんのこと派遣(請負)社員にも見える形にすることがポイントである。そのために問題の解決状況をマップ化して見える化を実現するとよい。
<問題解決状況マップ>
- 指導教育のスピード化・確実化
- 指導計画の明確化と見える化
派遣(請負)社員に対しての指導は短期間に戦力化することが求められる。短期的に戦力化を実現するためには指導計画を設定し、計画に基づいた教育指導の実施が必要である。
また、指導のための計画はできる限り職場のメンバーで共有化することが大切である。共有化・見える化することにより、職場メンバーの教え方のバラツキを少なくすることが期待できよう。
指導計画を共有化・見える化するための方向は次のような手段が考えられる。
<指導計画の共有化・見える化>
- 指導計画の掲示
- 共有サーバーに保存
- 関係者への配布
- 個々の派遣(請負)社員の能力レベルの見える化
ここの派遣(請負)社員の能力の現状がどのレベルかを見えるようにしていくことが必要である。見える化することにより、派遣(請負)社員同士の競争意識を引き出す効果がある。また、指導による能力向上の確認も可能となる。見える化の方向としてはスキルマップに整理して掲示板に張り出すなどの方向がある。
【標準的な評価ランク:技能系】
- 意思決定のスピード化・見える化
- 誰が、いつ、何を意思決定すべきかの役割の見える化
誰が、いつ、何を意思決定すべきかの役割の明確化が必要である。派遣社員が自分で仕事の判断をすることは困難な場合がほとんどである。受入先の管理監督者や正社員が判断し派遣社員に伝えなければならない。
ところが社員の間でその役割分担が曖昧なために必要とされる指示が必要な人のところにタイムリーに届かないことが発生することがある。そのような状況を防止するための意思決定のための項目と役割分担を明確化しておくことが有効である。
<意思決定すべき内容の例>
- 意思決定者まで、迅速に情報が伝わるしくみ
役割が明確になっても、意思決定すべき項目が現場で発生した場合にその情報が意思決定者に迅速に伝わ轤ネければスムーズに業務が進行しない。意思決定者に必要な情報が迅速に伝わるためには派遣社員と請負会社の管理責任者や請負会社の社員に対しての教育が重要となる。
<教育のポイントは報告・連絡・相談>
教育のポイントは報告・連絡・相談の仕方に関しての教育が重要となる。
報告・連絡・相談という基本動作を習慣づけるためのプロセスは、まず、報連相の重要性を徹底して教育する必要がある。頭ではある程度理解していても、実践できない人は多いものである。特に派遣(請負)社員はこの点の教育が不足している。
先ずは、なぜ報連相が重要か、なぜ実行いなければならないか、ということを十分教える必要がある。そして、具体的な報告のやり方を指導する。すなわち、いつ、どのタイミングを、誰に対して、どのような内容の報告をすべきかの具体的なやり方(報連相のルール)を設定し指導する。
つぎに、このやり方について実践できているかを社員が派遣(請負)社員にフィードバックすることが必要である。もし、報連相に問題があれば、その場で注意し、修正させることが大切なポイントになる。
<報連相のルール>
- 行動のスピード化
- 即、報告・連絡・相談する習慣づけ
仕事のスピードを高める基本は報連相を確実に実施することが需要である。そのためには報連相を実施する習慣づけが重要である。習慣づけするために大切なことは繰り返し実行させるように徹底することがポイントとなる。さらに、繰り返し実行させるためには、なぜ報連相が重要であるかを納得させることである。
また、報連相が的確にできていない場面を発見したならば、派遣社員の場合すぐに注意するなどの指導が必要である。請負会社の場合は請負業務管理者に対して事実をフィードバックを行うことが大切である。
- 今日の問題は今日解決する
派遣社員との関係で発生した問題点や請負会社の請負社員との関係で発生した問題点を認識したならばその日のうちに解決することが重要なことである。問題を先延ばしにする習慣があると問題が問題を引き起こすことになってしまう。
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