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2004.12【特集記事−本誌編集部より−】 進化するISO ─ ISO 14001:2004の改訂と新しいセクター規格の動向 ─ |
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いよいよISO 14001:1996の改訂版がISO 14001:2004として発行されます。その他、新しいセクター規格や官指導型の新しい規格やガイドラインが相次いで発表されています。それらの新しい規格の動向を小センターがかかわる部分で概説いたします。 1.ISO 14001:2004改訂(財)日本規格協会のホームページによると、今回の改訂は、(1)要求事項の明確化、及び(2)ISO 9001との両立性の向上、に限定したもので追加要求事項はないとしています。しかし、改訂の目的である要求事項の明確化と両立性の向上を達成するために行われた変更は、結果的には実質的に規格の要求が拡大・強化されることとなっているため注意を要します。ISO 14001:2004の改訂における特に重要なポイントは以下のとおりです。 1.要求事項の明確化 ISO 14001:1996の全世界での運用経験に基づきほとんどの要求事項の表現が分かりやすいように書き換えられましたが、特に規格やそれに基づく審査登録制度の社会的信用を維持する上で要(かなめ)となる要求事項については、安易な解釈を許さないように厳格な規定がなされました。 具体的には以下の3点が重要で、規格ユーザはこれらの要求事項について一層厳格な対応が求められます。 (1)法的及びその他の要求事項の順守に関わる管理の強化
(2)適用範囲内の全ての環境側面を考慮 組織がISO 14001に基づいて認証登録を行う際に、重要な環境側面を除外した形でシステムを構築し、あたかも組織の全てが認証登録されているかのようなアピールをすることを防止するため、環境マネジメントシステムの範囲を定めることが明確化されました。それと同様に「組織がどのようにして規格の要求事項を満たすか」を決定することが求められることとなりました。環境マネジメントの対象として従来「活動、製品又はサービス」という表記がなされていましたが、要求事項の中では「又は (or)」が全て「及び(and)」に変えられ、「活動、製品及びサービス」とされま した。組織は環境マネジメントシステムの適用範囲を決定して、決定した範囲内の「活動、製品及びサービス」の全ての環境側面の考慮をしなければなりません。適用範囲は一般に公正妥当と思われるように設定し、除外部分がある場合はそれについて説明することが附属書で推奨されています。 (3)間接的な環境側面への対応の徹底 「環境側面」の項で、「組織が管理でき、かつ、影響が生じると思われる」と記載されていた部分が、「組織が管理できる環境側面及び影響を及ぼすことができる側面」という表現に改訂され、直接管理できなくても影響を及ぼすことができる環境側面がマネジメントの対象となることが明確化されました。これは従来規格ではあいまいであった製品のライフサイクルマネジメントやサプライチェインマネジメントを明確に要求するもので、附属書で更に具体的な考慮事項が列挙されました。 2.ISO 9001との両立性の向上 「文書」、「記録」、「手順」、「不適合」、「予防処置」、「是正処置」、「監査員」の定義がISO 9000から引用されると共に、「文書類」、「文書管理」、「不適合並びに是正処置及び予防処置」、「記録の管理」、「内部監査」、「マネジメントレビュー」の各項の要求事項の記述においてISO 9001との両立性の向上が図られています。これらの要求事項の解釈、運用に当たってはISO 9001での解釈及び運用も参考とし、実運用面での両者の整合を図ることが期待されています。 これらに対応するために、小センターでは「ISO 14001 : 2004規格改訂の解説と組織の取り組み方」を開講いたします。 2.ISO 22000(食品安全MS)新しい食品衛生の国際規格であるISO 22000「食品安全マネジメントシステム−フードチェーン全体における組織に対する要求事項」が、いよいよ発行される見通しとなりました。国際規格案であるDIS22000は既に発行され(2004年6月3日)、現在はISOの中でISO 2200を担当するTC34(Technical Committee:専門委員会)のメンバー国により次の段階に進むための投票が行われており、まもなく締め切られました(11月3日)。投票の結果次第では、最速の場合、年明けの2月頃にはFDIS22000(国際規格最終案)が発行されることになりますが、TC34メンバー各国の動向に詳しい本の関係筋の情報によりますと、TC34の作業部会(12月13〜15日に開かれる)で再度審議した後で、FDIS 22000発行(2005年初夏)となるので、遅くとも2005年11月頃には国際規格ISO 22000は発行されることになります。従って2005年3月頃には国内の認定機関も決まり、その認定を受けて実際の認証・登録業務を担当するISO審査会社の審査基準なども公開されるのに加え、ISO 22000では機器、包装材料、洗浄剤、添加物及び材料の生産者やサービス業など間接的に食品に関連する組織にまで認証対象組織が拡大されたこともあって、競合他社に先駆けて新しい国際規格ISO 22000に基づく認証・登録を希望する食品関連企業の動きが一段と加速するものと思われます。 当社のセミナーは、まさにこのような時期に、ISO 22000の要求事項とはどんな内容なのか、DIS 22000で初めて導入されたオペレーションPRPsの概念を中心に、ISO9001及びCodexのHACCPとの違いに重点を置いて逐条的に解説いたしますので、ISO22000の特長をよりクリアーにご理解頂けます。 併せて受審に必要となる主な文書・記録類の作成・記載方法を分かりやすく説明しますので、ISO 22000の受審の準備を始めようとしている多くの企業の方々のお役に立つものと確信しております。 更に、ISO 22000ではじめて認証取得が可能になった機器や材料の生産者など間接的に食品にかかわる組織では、一般的にCCP(重要管理点)を決めるのが難しいため食品安全マネジメントシステムの構築は難しく一工夫する必要がありますが、本セミナーではこれらの組織に役立つ考え方もお教え致します。 ISO 9001認証取得がその企業の品質システムへの消費者の信頼性を高めたように、実にタイムリーに発行される食品衛生の国際規格ISO 22000による認証取得は、組織にとって消費者の信頼性を取り戻すには絶好の武器となるでしょう。 3.ISO/IEC17025と不確かさ我国でも、ISO/IEC 17025による試験所・校正機関の認定が急速に広まっています。従来の試験所、校正機関が顧客の要求によって認定を必要とするだけでなく、企業内の試験所(試験部門)や検査校正部門を独立させ、自社製品を保証したいという動きが高まってきていることが急速に増加している大きな理由です。従来の機械・電気業界だけでなく、環境の変化等の影響で、最近では食品企業でも認定取得の動きがあります。従来は、測定操作の繰り返しによる差(ばらつき)と真の値よりの差(かたより)の二つのパラメーターで評価します。この場合、かたよりは、方法や計測・計量機器の準備段階でかたよりがでないように調整します。すなわち、かたよりのあるものは使わない。したがって、精度(ばらつき)のみを実験などによって求めて、その方法の信頼性評価の基準にしています。 新概念では、例えかたよりをある値にきっちりと調整(校正)したとしても、微少ながら、調整作業に起因するばらつき(±X)が存在します。すなわち、これと精度を合成して「不確かさ」と表現します。よって、試験に使う計測・計量器、標準物質の証明書には、校正値や認証値だけでなくて、その値のばらつき程度(不確かさ)も必要となります。 ISO/IEC 17025は要求事項が300ほどあり、その中に技術的要求事項があるため、高度な知識とスキルが求められています。その中でも「測定の不確かさの推定」には当該試験の難易度によるばらつきはあるものの、相当な労力を要するのが一般的です。 小センターでは、「測定の不確かさの推定」について、その用語の理解と、事例を中心とした基礎講座を開講いたします。これから認定を考えている企業の方はもちろん、試験におけるばらつきの推定等に興味をお持ちの方も併せて、ご活用下さい。 4.ISO 13485医療機器認証ISO 13485は、ISO 9001をベースとして医療機器に関する追加要求事項を加えた品質マネジメントシステムのセクター規格です。1996年に誕生し、2003年7月にISO13485:2003が正式にISO規格として発行されました。ヨーロッパへの医療機器輸出企業は、医用機器指定(MDD)への適合のためにすでにISO 13485が必須となっています。 2002年に公布されて2005年に施行される予定の改正薬事法においても、医療機器に関わる品質システム要求事項の内容はISO 13485:2003が骨格になると予定されています。 小センターのセミナーではこの動向を踏まえ、ISO 13485の取得が強く要求されるようになってきた医療機器メーカーの皆様に、まずISO 13485とは何かを知ってもらい、制定された背景から取得の必要性を理解していただきます。 そのうえで規格の要求事項や、監査の注意点、リスクマネジメント、効果的な導入のポイントまでもお伝えします。 改訂薬事法はISO 13485で一元管理することが重要です。
5.ISO/TS16949コア技術ISO/TS16949(QS-9000)は、自動車メーカに急速に浸透しています。この中で、リファレンスマニアルで要求されているコア技術を全社的に修復しようという動きが高まっています。 FMEA、SPC、MSA等の中から、FMEAに関して概説してみましょう。 FMEA(潜在的故障モード・影響解析)は、製品の設計、工程の設定にあたり、おこり得る欠陥や故障を想定しその影響を認識して評価すること、その欠陥・故障の発生する機会を除去または削減できる行動を特定し、その効果を評価すること、そしてこれらの一連の活動が外部から見てもわかるような形で文書化することと定義されている。こうした活動は昔から設計者の頭の中では行われていたことだが、これを一連のパタン化したプロセスによって実施し、その経緯を分かりよい様式に記録することによって、外部から理解しやすく、より良く改善をしてゆくための基盤になることから1960年代半ばの航空宇宙産業に適用されてから普及したといわれている。 自動車産業・電子産業では以前から広く実用されていたが、QS-9000では4・2・3・5、4・4・5・1で適用が要求されており、APQPのプロセスの中でもFMEAの活動が指定されている。またPPAPでは提出または保管が要求されている。それは、潜在的な欠陥・故障モードを想定・認識する活動、予想される危険度をあるレベルより下げる活動が、設計品質、工程設計品質の維持向上に活きること、またその一連の活動の結果が一定のフォームに記録されていることで、顧客からみても透明性が得られるからである。設計FMEA、工程FMEAが手順どおり実施され、危険度を下げる見通しがついていてから量産に入っていることは、第三者審査でも記録上きびしく確認されることになる。 FMEAのマニュアルには設計・工程それぞれの様式(フォーマット)が添付されている。これはこのまま使用しなければならないということではないが、項目は全部入っている必要があるし、故障とその影響の評価、危険度低減努力を、マニュアルに沿って実施していることを実証できるので、なるべくこの様式を利用すべきである。 FMEAでは三つの要件を示している。
DFMEA影響度についての推奨される評価基準
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