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2005.01【特集記事−本誌編集部より−】
工場をこの眼でみてみよう!
この工場のここが見どころだ!

─ トヨタ自動車・堤工場、日産自動車・追浜工場 ─

 
いよいよISO 14001:1996の改訂版がISO 14001:2004として発行されます。その他、新しいセクター規格や官指導型の新しい規格やガイドラインが相次いで発表されています。それらの新しい規格の動向を小センターがかかわる部分で概説いたします。


1.トヨタ自動車・堤工場

トヨタ自動車・堤工場は、数あるトヨタの工場の中でも、最も多くの機能を備えた工場として、プレス、ボディ、塗装、組立のラインと部品ユニットの生産を行っています。堤工場は2ラインで9車種、2,000台/日を生産しています。第1ラインの生産 は6車種(プレミオ、アリオン、カルディナ、オーパ、ウィッシュ、サイオン)、タクトタイム57秒/台で1,000台/日。セダン、ワゴン、ミニバンなどタイプの異なる多車種を1つのラインに流してつくる混流生産が行われています。また、第2ラインの生産は4車種(プレミオ、アリオン、カムリ、プリウス)で、57秒/台、1,000台/日です。現在は人気車種のプリウスの生産が70%を占め、プレミオとアリオンの2車種に関しては、第1ラインと第2ラインをうまく連携させたブリッジ生産(並産)が行われています。
堤工場では、組立の可動率が96〜97%の高い可動率になっており、皆様の見学でも、その日の可動率が一目でわかるようになっております。
現在、約6,500名の従業員ですが、30%は季節工やアウトソーシングによる正社員以外の従業員です。皆様に見学していただく、ボディ工場の溶接工程では、ロボットが活用されており、1ラインに500台の溶接ロボットを配置して約4,000点の部品を溶接しております。溶接工程では約93%がロボットによる自動化(溶接自動化率93%)で行われており、残りの7%は小サブ工程などの手作業となっています。
メインボディはまず仮付工程で精度を出し、増打工程で強度を出すという順序で作業が進められメインボディの増打工程は現在、12ステーションからなっており、ステーションごとに8台のロボットを配置。
新ラインでは大・中・小のロボットをうまく組み合わせ、工程の長さを半分に短縮した密度の高い編成がすばらしい。まるで、アニメやSFの世界のように見える風景です。
見学していただく組立工場の組立ラインでは2ラインによる多車種・混流生産を行い、顧客のオーダーに従った順番で生産される受注生産方式が行われています。堤工場の創業以来のモットーである「良い品、よい考え」が生産ラインのいろんなところで活かされ、SPSという新しい部品供給システムをうみ出したわけです。SPSは部品の選択と組付作業を分離し、作業者はそれぞれの作業に集中することで品質の安定を確保します。
その仕組みとは、組立工場の2階に設置されたSPS(部品セット供給)場で、1台当たりに必要な部品をあらかじめセットしておき、1階組立ラインの車両コンベアの流れに併走するワゴン台車にセット箱を乗せ、作業者が受け持ちの番号のついた箱の中から順次、部品を取り出して組み付けるシステムです。
これによりラインサイドの部品棚は一掃され部品棚への供給に走り回るAGVもなくなってきています。これらの姿を目の当たりにできるのも堤工場の魅力です。
ハイブリッドカーのプリウスを組み立てている第2ラインでは、ガソリン車とハリブリッドカーがうまく混流している様子を目の当たりにできます。プリウスは独自機構を有し、ガソリン車に比べると組付作業が複雑で時間がかかるため、専用工程(サブライン)で集中的に組み立てたユニットがメインラインに送られ、専用のサブラインでできる限り工数差を吸収してメインラインと同期化できるようになっています。
素晴しい現場改善の知恵が生かされています。

2.日産自動車・追浜工場

追浜工場はマーチ、キューブ、キューブ キュービック、インフィニティ I 35(輸出向)を生産する1961年創業の日産の中核工場です。ここでは厳密な品質管理とロボット(自動化)と人の動きの協調による合理化に早くから取り組み、成果をあげてきました。「技術の日産」を具現化してきた工場です。また、完成車をそのまま専用埠頭から船積みするまでを一貫して流すなど、ロジスティクスを一体化して合理化してきました。
最近、とくに力をいれているのが協力会社との連携強化によるさらなる効率化です。
協力会社が構内のサブラインで組み立てを行い、そのまま日産のメインラインへ納入、組み付け、完成させる「ニッサン・プロダクションシステム」。試行錯誤を繰り返しながら、モジュール化の進展とともに軌道に乗せたもので、現在、コスト、納期ともに世界に誇れるものだといわれています。
今回の見学セミナーではこのシステムを重点的に見学、日産の技術担当者からシステム構築時の留意点や協力体制の作り方などのレクチャーを受けます。現在、製造業において、1社ですべてをまかなうのはコスト、工数、納期ともにムダが多い。とすれば、協力会社との協調関係をいかに築くか、どのようなシステムとするのが機能的かを掘り下げていかなければなりません。これらを考える上で、資するところ大であると思われます。
ところで、アうしたシステムを作るには100%の良品率、タクトタイムに追随できる工程能力が必要になります。どのような点に注意すべきか。また、市場の動きに対応して、つねにライン切り替えができるような体制をつくっていかなくてはなりません。ここをどうするか。これを翌日の講義で行うスケジュールとなっています。
なお、同工場は1997年環境マネジメント国際規格「ISO 14001」を認証取得、1998年「神奈川県地域共生型工場」表彰を受賞しています。環境マネジメントの面でも見るべき点は多い。と思われます。


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