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2005.06【特集記事−本誌編集部より−】 ナゼナゼシートの活用法 「不良・ミス・事故」再発防止に ナゼナゼシートは何故有効か
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1.なぜ「ナゼナゼ」か不具合の原因追求とは,どういうふうにして不具合に至ったかという過程の解明であると同時に,不具合が起きる可能性が,どこにどんな形で潜んでいるかを見付けることであると言ってもよい。しかし,「原因をはっきりさせる」ということは,それほど簡単なものではない。なぜならば,原因が関与している過程をたどっていくと,原因というものが直列的に も,並列にも階段のような層状の構造を持っているからである。 原因の追求に当たっては,まず不具合の直接的な原因が何であるかが追求される。しかし,その直接的な原因が見つかればそれでよいのかといえば,そうではない。その直接的な原因は,いったいどこから出てきたのかということが問われる。そうするとその原因の原因が追求されることになる。次々にこれと同じ要領で,その先の,またその先の先の原因を見つけ出すことになる。 このことは,我々の普段の生活の中でも「このような時に,あのような事が…」と話すように,不具合いな現象は,それを引き起こす要因が数多くあって,その内の一つに他の要因や条件が重なって,顕在化する(起きる)と考えられている。 この考え方を「原因多元論」と呼び,「原因」と「結果」が1対1で直結するのではなく,複数の要因を連結させて考える必要があるとする考え方である。 このように本当の原因(根本原因とか真因とか呼ぶ)を探り当てるには,不具合な現象の原因の構造からしても「ナゼか?」「ナゼか?」を繰り返して,原因の原因を逐次追求していく必要がある。 「ナゼ,ナゼを5回繰り返さないといけない」いわれるのはこのためである。 ナゼナゼシートは,「或るルールに従って書く」「或る様式と手順に従って書く」ということであっても,ただ機械的に書けばよいというものではない。 2.再発防止立案表(ナゼナゼシート)とは再発防止立案表(ナゼナゼシート)は,右上図に示すように,言語データを整理する ために,樹のように枝わかれした図を使い,問題を遡及的にナゼかナゼかと枝分かれさせながら考えていくことによって,真の問題解決の方策を探ろうとする様式化された手法である。一人一人の仕事に利用できて「業務改善や品質向上」に極めて有効である。
不具合な現象を「何が,どう悪かった」という意味の表現で把握し(「悪かった」と書くのではない),それに対してそのようになった原因は何か,そのまた原因は,……というように原因を繰り返して追求していく。そのことによって「悪かったこと」の表面的な原因ではなく,奥に隠れている真の原因を引き出すことができるのである。そして,この真の原因に対策していこうとする手法である。 この「ナゼか?」「ナゼか?」によって原因を追求する場合,忘れてならないのは,悪い現象の悪い原因を追求して,同じ不具合を二度と繰り返さないという,はっきりとした目的を持っているということである。いくら事実が明らかになっても,再発防止の的確な方策が確立されなければ何にもならない。このことを忘れてしまうと,結局は何をしているのか分からなくなってしまう。連続的に脈絡する原因群の中から,改善策が的確に,具体的に実施できるところまで「ナゼか?」と追求していくことが大切である。 不具合に対する態度は,「疑わしきは罰す」という態度であり,疑わしきものを,即ち可能性のあるものもできる限り潰すということが目的であるから,今求められているものは事態を変える方策なのである。言い換えれば,「再発防止を行う」ということは,それが小さなことであっても。「何かが現状とは変わる」ということである。 3.再発防止立案表(ナゼナゼシート)のねらい再発防止立案表(ナゼナゼシート)は,
1)不良損失の低減 実際の工程不良やクレームの大部分は,いわゆる小口のもので,表面上一件当たりの損失費用は僅かなものであるが,それが数多く積み重なって大きな損失額になっている。即ち,実際の損失費用の大部分はつまらぬ失敗によるものであり,しかも過去の失敗の再発である場合が多い。 この再発防止立案表(ナゼナゼシート)による「仕事の質の向上」は,このような 「つまらぬ失敗」に対して有効に働くので,「つまらぬ失敗」不良による損失費用の低減を4ケ月〜6ケ月毎に確認しながら,地道に活用し定着されることが大切である。 2)問題の顕在化と共有 再発防止立案表(ナゼナゼシート)を正しく活用していくと,参加者が素直に自分の考えを述べることができるように訓練されてくる。それによって今まで隠されていた或いは隠れていた小さな,それでいて大切な又は基本的な問題点が明らかになってくる。このことは,各部門が共通の言葉(手法)で対話し易くなり,その結果品質問題を共有しやすくすることを意味し,「仕事の質の向上」に相乗効果をもたらす。 このような問題,対策などの共有化が進んでいく度合いを一つの尺度として,活用・定着の進み具合を確認するのがよい。主管部署(又は担当者)があるのが望ましい。 3)固有技術の蓄積 「つまらぬ失敗」をナゼナゼ分析(反省)していくと,
従って,再発防止対策で培われた固有技術が失われることなく蓄積され(標準化され),現にそれが活用されていることを常々確認していくことが大切である。 4)人材育成 ナゼナゼ分析(反省)を継続的に行っていくと,各職場の人々に,
また,ナゼナゼ分析(反省)を活用して,失敗当事者と管理者とで十分な対話をすることが特に大切である。これは単に失敗を正すということだけではなく,対話を通じて管理者又は経験者の持っている知識や技術の次の世代に伝えていくことでもある。 失敗例は真の教師であるから,これから何かを真剣に学ぼうとする考え方と積極性があれば,唯単なる表面的なお説教とは違い,必ず管理者,当事者,関係者,参加者は成長するはずである。又,このような真の原因を追求していく姿(人)は,周りの人々に必ずよい影響を及ぼす。所謂「企業風土の醸成」である。 このように,人を育てるという意識を持ってナゼナゼ分析(反省)を活用することが大切である。 4.問題の選定ナゼナゼ分析で再発防止を行っていく問題としては,
損失費用の大きな大問題や最先端の技術に係わるような問題は,それはそれで重要であるが,このナゼナゼ分析を活用できてもそれだけで解決できるというものではない。 上記のような日常的な問題が積み重なって,不良やクレームとなり大きな損失になっているから,全員でナゼナゼ分析(反省)を継続できるような問題に対して地道に努力していくことが大切である。実際の作成法や活用法,その効果はセミナーや出版物で確認していただきたい。 |