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【新連載:MOTリーダーの条件 〜情報マネジメントが開く経営者の世界〜2】 PDCAを経営成果に結び付ける「もうひとつの技術」 〜自己目標管理で技術者の能力を120%引き出す〜
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如何に優秀な技術でも一人の技術者の頭の中にあるだけでは、経営成果に結びつきません。部下のやる気を出させ成果をあげることは、リーダーの本業だといえますが、このことに自信を持っている人は、少ないようです。 ■PDCAで人は動かない。ものつくりの現場においてPDCAはあまりにも有名です。デミング博士が説いたとされるこのPDCAは、あくまでSQC(統計的品質管理)の一つの手法、プロセスです(注1)。企業で行われている管理者研修では、「目標を決めた後は、PDCAを回せば良い」と教えられることがほとんどです。ものをつくる現場であれば、製造ラインとその稼動状況の品質を維持するための測定と検査、結果による是正など、PDCAは「ものつくりの技術」を中心としたマネジメント(経営管理)手法の一つにちがいありません。 しかし、これを人に適用すると、どのようなことが起こるでしょうか。「計画を立てたら、後は、PDCAで回せばいい」となり、月次や四半期のタイミングで上司が部下に対して、数字を話題にして問い詰めることになります。この時ばかりは、日頃の人間関係を壊しかねない一種の緊張感を覚えたという経験をしている人が多いはずです。 部下に未達の結果を提示して、結果責任を詰め寄っても、結果が好転することはないのを知っているはずなのに、ついやってしまいがちです。このようにして、上司と部下の信頼関係は崩れ、形だけで動く「労働力」としての機械的な働きと、その結果を得るのが精一杯となります。技術者(知的人材)は、このような仕事環境では、能力を発揮できないに違いありません。 ■目標管理は誤って使われている?経営の現場を見てみると、「PDCAを回す」というやり方を目標管理の当然の管理手法として、成果主義の人事制度の中心的な仕組みとなって運用されています。そこで、目標管理のねらいを尋ねてみると、多くの企業の導入担当者は、「本人の責任感を育てる」「モチベーションを上げるのに効果的である」などの回答が返ってきます。ところが、目標管理の運用の現実は、「笛吹けど踊らず」の常態化、目標の押し付けられ感をぬぐえず、目標管理の形骸化に直面することになります。 前述したように上司と部下の信頼関係を壊しかねないやり方、技術者や知的人材の個性やプライドを軽視するような「未達成の数字に対する責任追及に終始する」上司の部下への接し方、いずれにおいても経営成果を期待するには無理があるといわざるを得ません。 ■PDCAではないマネージャーの仕事それでは、技術者でなくても知識労働者を活かすマネージャーの仕事は、どうあるべきでしょうか。マネジメントを体系的に完成させたドラッカーは、マネージャーの5つの仕事(注2)をあげています。次頁の図をご覧ください。すなわちマネージャーの5つの仕事とは、以下のとおりです。
■技術者の能力を120%引き出す自己目標管理という情報マネジメント人は、情報が与えられず責任だけを持たされることを好みません。どちらかというと知的な人材(理屈で考えることを優先しがちな人材)が技術職です。技術者に責任ある仕事を要求するのであれば、その技術者が欲しい情報を提供する替わりに、「いつまでにどのような成果を出すのか」をコミットメントしてもらうという方法が、効果的だと思われます。このような手順を踏むことは、組織目標を理解させ、自分は何をもって貢献することが出来るかを考えさせ、その期限も決める(コミットメント)ことになり、自分で自分の目標を決めたことになります。 実行過程においては、その技術者の状況に関する情報をフィードバックすることで、自分の行動をコントロールすることができるように環境を整えて(組織化して)おくことは、組織と上司の役割です。まさに、上司や組織が行うべき、情報マネジメントそのものです。 あても無く仕事をさせられたり、責任だけを押し付けるやり方も、技術者にやる気を失わせることになります。自分の目標を自ら立てさせ、実行状況の情報を与えてセルフコントロールできる環境を提供することが、やる気を引き出すことにつながるのです。 これが自己目標管理という考え方の概要です。 技術者のモチベーションを引き出し、「ものつくりの技術」を「経営成果」に結び付けるには、個人の自己目標と組織目標という「方向性を示す情報」を一致させる経営活動が不可欠です。このことも情報マネジメントの一領域なのです。 ※目標管理の見直しと自己目標管理については、新技術開発センター主催;「目標管理の条件」セミナー(3月26日)で、一日集中講義を行います。
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