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2000.10【特集記事−本誌編集部より−】
環境保全コストのとらえ方
――環境庁ガイドラインに沿って――
※詳細は「環境会計導入マニアル」をご覧下さい。

 
 環境庁のガイドラインによると、
環境保全コストの把握のための基本指針

(1) 環境保全コストの定義

 本ガイドラインにおいては、環境保全コストの定義は「環境保全のための投資額と費用額」である。
 また、この環境保全コストに該当するか否かの判断基準は、支出目的を原則とし、必要に応じて環境保全に関わる効果面からの判断によるものとする。
 なお、細部にわたっては、概念整理も具体的な把握方法も、現時点では確立していないので、この場合には、財務会計上の一般的な考え方を援用することにより補完していくことになる。

 1)投資額と費用額
 環境保全コストとしての投資額は、原則として、環境保全を目的とした支出で、その効果が数期にわたって持続し、その期間の間に費用化されるものを対象とし、財務会計上の償却資産の当期取得金額とする。
 また、費用額とは、環境保全を目的とする支出により取得した財・サービスの費消によって発生するものであり、費目別には人件費、原材料費、減価償却費、引当金繰入額等が対象となる。
 2)研究開発コスト
本ガイドラインでは、研究開発活動に関する環境保全コストを研究開発コストとし、その内訳として、投資額と費用額がある。
研究開発活動に関わる支出は原則として研究開発コストのうち費用額とし、専ら環境保全目的で行われる研究開発に利用するための償却資産の取得額は、研究開発コストのうちの投資額とする。
 3)社会的コスト
この費用は、企業等によって通常負担されるコストに対して、これ以外、すなわち外部不経済として社会が負担しているコストである。例えば、企業等の経済活動の結果、排出される環境汚染物質によって引き起こされた第三者の健康被害、農産物や漁業への被害などである。
 4)環境保全の概念
ここでは、環境保全とは、「環境負荷、すなわち、事業活動その他の人の活動によって生じる相当広範囲にわたる環境に加えられる影響であって、環境の良好な状態を維持する上での支障となる恐れのあるもの(以下環境負荷という)の発生の防止、発生の抑制、影響の除去、発生した被害の回復またはこれらに資する取組み」をいう。具体的に、
  1. 公害防止
  2. 地球環境保全
  3. 資源循環
  4. その他の環境保全
に分類している。
(2) 環境保全コストの分類

 1)活動領域からの分類
 事業活動を環境負荷との関連から、次の4領域に分類している。
  1. 生産・サービス活動
  2. 管理活動
  3. 研究開発活動
  4. 社会活動
 2)支出目的からの分類
 支出目的からは、次の6項目に分類している。
  1. 事業エリア内コスト:生産・サービス活動に事業エリア内で生じる環境負荷を抑制するための環境保全コスト
  2. 上・下流コスト:生産・サービス活動に伴ってその上流または下流に生じる環境負荷を抑制するためのコスト
  3. 管理活動コスト:管理活動における環境保全コスト
  4. 研究開発コスト:研究開発活動における環境保全コスト
  5. 社会活動コスト:社会活動における環境保全コスト
  6. 環境損傷コスト:事業活動領域とは無関係な環境損傷コスト
 3)事業エリア内コストの分類
 上記の事業エリア内コストについては、環境保全分野との関係で3つに分類される。
  1. 公害防止コスト
  2. 地球環境保全コスト
  3. 資源循環コスト
(3) 環境保全コストの把握方法

 1)集計の範囲
 最終的は、連結決算の全社及び全グループが対象になるが、まずは、集計しやすい工場、事業所等のサイト単位、あるいはより小さな区分からでもよい。
 従って、連結決算の範囲は、連結財務諸表は勿論のこと、環境報告書との関連も当初はこだわることはない。
 2)対象期間
 公表する環境保全コストの対象期間は、環境報告書又は財務報告書との対象期間と合わせて考えるべきである。
 3)環境保全コストの具体的な把握(測定)方法
  1. 環境保全コストの判断基準 個々のコストが環境保全コストに該当するか否かは、純粋に環境保全のためのコストに限定して支出目的で捕らえて集計する。
  2. 複合的コストの分別 環境保全以外の目的のコストや通常のコストと結合した複合的コストからの環境保全コストの分別は、次の通りの優先順位で考えるものとする。
    i)差額の集計:通常のコストを控除した差額を集計する
    ii)按分集計:支出目的により按分して集計する
    iii)簡便法による集計:例えば25%、50%、75%と按分比率を決めておき選択する
    iv)特記付き全額計上:重要な要素を含み、かつその部分が分別困難な場合
  3. 人件費
    実際の職務内容と環境保全との関係を考慮して集計するが、兼務職員の場合には、一定期間の労働時間配分比率を基に推定する。
  4. 減価償却費
    減価償却費を把握する場合には、環境保全への取組みを始めた時点を特定し、環境保全以外の投資にかかわる減価償却費との差額のうち当期に効果の及ぶ部分を、その時点までさかのぼって集計する。
  5. 本業環境ビジネス
    本業として環境ビジネスに取り組む場合には、環境ビジネスに関するコストは環境保全コストには含まない。
 4)環境保全コストの具体的分類
  1. 事業エリア内コスト
    この「生産・サービス活動により、事業エリア内で生じる環境負荷を抑制するための環境保全コスト」は、企業等の生産・サービス活動により、事業エリア内(物流・営業活動を含む企業等が直接に環境への影響を管理できる領域)で直接発生する環境負荷を抑制する取組みのためのコストである。そしてこれらのコストは、次の3項目に分類される。
    i)公害防止コスト
    これは公害防止のために、生産設備の末端(エンド・オブ・パイプ)に付加した施設・設備又は生産設備の末端で発生する環境負荷を抑制するための取組みコストであり、これは更に次の8項目からなっている。
     a)大気汚染防止のためのコスト
     b)水質汚濁防止のためのコスト
     c)土壌汚染防止のためのコスト
     d)騒音防止のためのコスト
     e)振動防止のためのコスト
     f)悪臭防止のためのコスト
     g)地盤沈下防止のためのコスト
     h)その他の公害防止のためのコスト
    ii)地球環境保全コスト
    これは次の3項目からなっている。
     a)温暖化防止のためのコスト
     b)オゾン層破壊防止のためのコスト
     c)その他の環境保全のためのコスト
    iii)資源循環コスト
    これは持続可能な資源循環の取組みのためのコストであり、次の7項目から成っている。
     a)資源の効率的利用のためのコスト
     b)節水、雨水利用等のためのコスト
     c)産業廃棄物の減量化、削減、リサイクル等のためのコスト
     d)事業系一般廃棄物の減量化、削減、リサイクル等のためのコスト
     e)産業廃棄物の処理・処分(埋め立てを含む)のためのコスト
     f)事業系一般廃棄物の処理・処分(埋め立てを含む)のためのコスト
     g)その他持続可能な資源循環に資するコスト
  2. 上・下流コスト
    この「生産・サービス活動に伴って上流又は下流で生じる環境負荷を抑制するための環境保全コスト」とは、グリーン購入のように、事業エリアの上流側で発生する環境負荷及び企業等が生産・販売した製品、容器包装等の使用消費・廃棄に伴い、事業エリアの下流側で発生する環境負荷を抑制する取組みのためのコストであり、次の6項目である。
    i)環境負荷の少ない製品、商品及び原材料等の購入に伴い発生した通常の購入行為との差額コスト
    ii)生産・販売した製品等のリサイクル・回収・再商品化・適正処理のためのコスト
    iii)容器包装等のリサイクル・回収・再商品化・適正処理のためのコスト
    iv)環境保全対応の製品・サービスを提供するための追加コスト
    v)容器包装等の低環境負荷化のための追加コスト
    vi)上記i〜viに関連したコスト(業界団体等への負担金等を含む)
  3. 管理活動コスト
    この「管理活動における環境保全コスト」は、企業等の環境保全のための管理活動であり、事業活動に伴い発生する環境負荷を抑制することによって間接的に貢献する取組みのためのコストであり、次の4項目が挙げられる。
    i)社員への環境教育等のためのコスト
    ii)環境マネジメントシステムの構築、運用、認証取得のためのコスト
    iii)環境負荷の監視・測定のためのコスト
    iv)環境保全対策組織の人件費及び上記ヒ〜ヘに関わる人件費
  4. 研究開発コスト
    この「研究開発活動における環境保全コスト」は、企業等が研究開発コストとして把握している研究開発活動のための人件費を含むコストのうち、環境保全に関わるコストであり、研究開発のための投資額も含んでおり、次の3項目からなっている。
    i)環境保全に資する製品等の研究開発コスト
    ii)製品等の製造段階における環境負荷抑制のための研究開発又は企画設計コスト
    iii)その他、物流段階や製品等の販売段階等における環境負荷抑制のための研究開発コスト
  5. 社会活動コスト
    この「社会活動における環境保全コスト」とは、自らの事業活動に直接的には関係ないが、企業等の社会活動における環境保全に関わる取組み、又は情報公開などの企業等が社会とのコミュニケーションを図る取組みのためのコストで、次の4項目が挙げられる。
    i)自然保護、緑化、美化、景観保持等の環境改善対策のコスト
    ii)地域住民の行う環境活動に対する支援(基金作り等)及び地域住民に対するセミナーなどの情報提供等各種社会的な取組みのためのコスト
    iii)環境保全を行う団体等に対する寄付、支援のためのコスト
    iv)環境情報の公表及び環境広告のためのコスト
  6. 環境損傷コスト
    この「環境損傷に対応するコスト」は、企業等の事業活動が環境に与えた損傷に関して生じたコストであり、次の3項目が考えられる。
    i)土壌汚染、自然破壊等の修復のためのコスト
    ii)環境の損傷に対応する引当金繰り入れ額及び保険料
    iii)環境保全に関わる和解金、補償金、罰金、訴訟費用
  7. その他のコスト
    この「その他環境保全に関連するコスト」は、これまで列挙した項目に当てはまらないコストが生じた場合のもので、もし発生したらその範囲を明確にしておくことが必要である。







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