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2003.07【特集記事−本誌編集部より−】
社内標準なきところにマネジメントシステムなし
−品質計画書の有効利用でさらなるブラッシュアップを−

 

★★★プロセスアプローチとは★★★

プロセスアプローチとは数多くの相互に関連・作用しあうプロセスを明確にし、これを運営管理することだ。たとえば生産工程を例にすると、1つの製品が出来上がるまでの流れを明確にし、そこに携わる外注、社内の各セクション(商品開発、設計、購買、工務・工機、生産管理、生産技術、製造、品質保証、営業、サービス、流通センターなど)がいかに製品にかかわり、また互いの業務が関連し、つながっているかを把握し、スムーズに流れるようにマネジメントしていくことになる。
しかしながら、複雑に絡み合う業務の流れや数多くの関連部署、会社がある仕事を1つの流れとして捉え、運営管理するのはとても難しい。そこで、品質マネジメントシステムを構築する方法として一般的には一覧表やフロー図に組織活動を単位別に書き出し、整理してインプットやアウトプットを考慮しながらプロセスのつながりを明確にした品質マネジメントシステム体系図の作成を行う。
では、プロセスのインプットアウトプットとはどのような項目をさすのであろうか。アウトプットは顧客及び利害関係者のニーズと期待を考慮したものとなる。なお、検証のためにアウトプットは記録し、インプットの要求事項と合否判定基準に対して評価することになる。
一方、計画へのインプットとしては組織の戦略、目標、明確にされた顧客・利害関係者のニーズと期待、法令・規制、製品の出来栄えデータの評価などが対象となる。
そして、最終的に(1)プロセスの信頼性及び繰り返し性(2)起こりうる不適合の特定と予防(3)設計・開発のインプット及びアウトプットの妥当性(4)インプット及びアウトプットの計画目標との整合性(5)改善の可能性、未解決の課題――をレビューする。

★★★品質計画/品質計画書のすみわけ★★★

プロセスにおけるインプット、アウトプットあるいは計画へのインプットが把握さ れ、フローが明確になったら、マネジメントシステム全体の計画が必要になる。これが品質計画である。品質の目標、規格の要求事項を満たすために策定されるが、これと対になっているのが品質計画書である(図参照)。
顧客要求事項を品質目標とすれば、これをブレイクダウンし、特定製品の要求事項にまで落とし込んだのが特定製品の品質目標であり、文書化した「品質計画書」とな る。製造であればQC工程表になろうし、購買であれば購買仕様書や図面となる。
品質計画書のメリットは個別のプロジェクト、製品、プロセスにおいて、どの手順、どの関連する資源が、誰によって、いつ適用されるかを明確にできる点である。つまり「どんな場合でも、いつ、だれが、行っても」アウトプットが同じということになる。これが繰り返し性であり、信頼性のインフラストラクチャになるのだ。
このため、品質計画書では当該業務の目的、内容、範囲だけでなく、特殊用語についての解説や工程ごとの責任と権限、品質記録、関連規格を明記し、また、部門間の接続方法や仕事の配分を明確にし、さらに業務の変更・修正方法をはっきりとさせておく必要がある。
これがないとどこまでが担当か、改善を行ったときに、だれがどのように承認するか、その改善が他部門に影響を及ぼす場合に、どのように通知するかが分からない。また、日常業務においても、担当する人間が変わるごとに業務内容や範囲が変わることになってしまう。

★★★品質計画書は企業生き残りインフラだ★★★

品質計画書は業務フローチャートであり、QC工程表である。これが品質システムを構成する文書であり、社内標準となる。逆説的にいえば、社内標準がきちんとできていないとISOの要求する品質システムの構築は難しい。
標準書はISO 9000が普及する以前から存在した。「標準」がなければ、各人の作業方法がばらばらなため、繰り返し性はなく、不良の原因追求もできない。アウトプットは同じになるかもしれないが、「継続的改善」はできず、インプットが異なるためマネジメントも難しいという事態にいたる。
品質計画書そのものが製品の品質保証を行い、顧客要求事項を満足させるものではない。だが、これがなければ「改善」をするきっかけさえない。ISO 9000:2000では継続的改善が求められているが、これはISOに限らず、企業が生き残るためには必ず取り組んでいかなくてはならないものだ。とすれば、品質計画書は企業が生き残るインフラだともいえよう。

図 品質計画、品質計画書のすみ分け
(「ISO 9000:2000年版対応マネジメント・プロセスアプローチと品質計画書見本」より)


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本稿は「ISO 9000:2000年版対応 マネジメント・プロセスアプローチと品質計画書見本」(編著・阪本三郎氏、29600円)をもとにテクノビジョン用に書き起こしたものです。


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